陸上無線技術士の操作範囲の歴史

このページは、無線従事者資格の謎の別編である資料集です。特に、陸上無線技術士(旧無線技術士)の操作範囲の変遷を対象としています。

あくまで、歴史的な資料としてまとめたものですので、現行法規上、有効なものかどうかは必ず法令集を参照するようお願いいたします。最新の法令は政府の法令データ提供システムで閲覧が可能です。

その他の資格は下記リンク先参照。

目次

 

電気通信技術者時代

現行の陸上無線技術士が最初に出来たのは、旧無線電信法の時代、昭和15年に国際電気通信(株)のためにできた資格です。(経緯の詳細は無線従事者資格の謎に記載)

資格の発足当初は、有線と無線を両方含むものでしたが、昭和25年に電波法が施行された以降は無線のみに限定した資格となりました。

昭和15年 電気通信技術者資格時代

操作範囲は、電気通信技術者資格検定規則(昭和15年3月30日 逓信省令13号)に明記されず、規則上は単に資格の種別を定めるだけでした。

関連命令で国際電気通信(株)と(社)日本放送協会の主任技術者に対して、下記の資格が要求されました。その他は不明ですが、アマチュア無線局に対しても昭和15年12月から資格を要求するようになっています。

昭和15年3月30日 逓信省令13号
資格 操作範囲
第一級 規定なし
第二級 規定なし
第三級(無線) 規定なし
第三級(有線) 規定なし

国際電気通信(株)の主任技術者に対して要求された資格

昭和15年3月30日 逓信省令12号 別表
区別 資格
一 線路 (一)長距離市外ケーブルノ建設 第一級
(二)海底ケーブルノ建設 第一級
(三)短距離市外ケーブルノ建設 第一級
(四)裸線又ハ市内ケーブルノ建設 第二級
(五)長距離市外ケーブルノ保守 第一級
(六)海底ケーブルノ保守 第一級
(七)短距離市外ケーブルノ保守 第二級
(八)裸線又ハ市内ケーブルノ保守 第三級(有線)
二 中繼所内装置 (一)中繼所内装置ノ新設工事 第一級
(二)中繼所内装置ノ增設工事 第二級
(三)中繼所内装置ノ保守 第二級
三 長距離囘線ノ保守統括 第一級
四 無線送信装置 (一)空中線電力五百ワツト以上ノ装置ノ建設 第一級
(二)空中線電力五百ワツト未滿ノ装置ノ建設 第二級
(三)空中線電力三キロワツト以上ノ装置ノ保守 第一級
(四)空中線電力五百ワツト以上三キロワツト未滿ノ装置ノ保守 第二級
(五)空中線電力五百ワツト未滿ノ装置ノ保守 第三級(無線)
五 無線受信装置 (一)國際通信用装置ノ建設 第一級
(二)國内通信用装置ノ建設 第二級
(三)國際通信用装置ノ保守 第二級
(四)國内通信用装置ノ保守 第三級(無線)
(五)國際通信用装置ノ調整 第二級
(六)國内通信用装置ノ調整 第三級(無線)
六 空中線装置 (一)空中線装置ノ建設 第二級
(二)空中線装置ノ保守 第三級(無線)

放送局(NHK)に対して要求された資格(放送用私設無線電話規則改正)

昭和15年12月6日 逓信省令82号
区別 資格
一 放送無線電話装置 (一)空中線電力百ワツト以上ノ装置ノ建設 第一級
(二)空中線電力百ワツト未滿ノ装置ノ建設 第二級
(三)空中線電力一キロワツト以上ノ装置ノ保守 第一級
(四)空中線電力百ワツト以上一キロワツト未滿ノ装置ノ保守 第二級
(五)空中線電力百ワツト未滿ノ装置ノ保守 第三級(無線)
二 無線中繼用受信装置 (一)無線中繼用受信装置ノ建設 第二級
(二)無線中繼用受信装置ノ保守 第三級(無線)
三 スタヂオ装置 (一)スタヂオ装置ノ建設 第一級
(二)多重放送ヲ爲ス放送無線電話ノスタヂオ装置ノ保守 第一級
(三)其ノ他ノスタヂオ装置ノ保守 第二級

なお、第1級の無線通信士資格を有する者は、自動的に第3級(無線)の資格者とみなされます。

昭和21年 改正時

理由はまだ不明瞭な部分が多いですが、唐突に1資格増えました。放送受信級です。

NHK内部資格であった、「指定ラジオ相談所主任技術者検定試験」が国家資格化したものです。事実上は、ラジオ技能検定のようなものであり、現代では(財)家電製品協会の「家電製品エンジニア」試験が本資格を間接的に受け継いだと考えられる資格です。

放送受信級はわずか3年間で廃止され、以後は無線従事者とは直接無関係な通商産業省管轄の資格「ラジオ受信機修理技術者検定」に継承されていきました。

より詳細の経緯は本編に記載してあります。 ちなみに、戦後の問題は、GHQ指示と思われる思想調査っぽいのが入ってる・・・おっかない時代。↓

昭和22年度 放送受信級 通信概論科目(全1問)
問 平和日本建設に当たつてラジオ放送の果たすべき使命に就いて述べよ
解答ポイント
  • ラジオ放送の特質は敏速広範性にある
  • 平和日本建設には軍国主義思想の払拭ならびに平和思想の普及が必要である
  • 平和日本建設には文化向上が不可欠で、ラジオにはその使命があること

昭和21年度では「問 ラジオ放送と我々の日常生活との関係について述べよ」…と、結構のどかな問題でして、1年間のうちに某所から、何か有難いご指導・ご鞭撻でもあったのかと思わせる内容になっています。

昭和21年 閣令16号
資格 操作範囲
第一級 規定なし
第二級 規定なし
第三級(無線) 規定なし
第三級(有線) 規定なし
放送受信級 規定なし

放送用私設無線電話規則の改正内容

新資格の登場と同時に、放送用私設無線電話規則も併せて改正され、放送受信級で従事できる業務が追加されました。

昭和21年3月18日 閣令18号
区別 資格
一 放送無線電話装置 (一)空中線電力百ワツト以上ノ装置ノ建設 第一級
(二)空中線電力百ワツト未滿ノ装置ノ建設 第二級
(三)空中線電力一キロワツト以上ノ装置ノ保守 第一級
(四)空中線電力百ワツト以上一キロワツト未滿ノ装置ノ保守 第二級
(五)空中線電力百ワツト未滿ノ装置ノ保守 第三級(無線)
二 無線中繼用受信装置 (一)無線中繼用受信装置ノ建設 第二級
(二)無線中繼用受信装置ノ保守 放送受信級
三 スタヂオ装置 (一)スタヂオ装置ノ建設 第一級
(二)多重放送ヲ爲ス放送無線電話ノスタヂオ装置ノ保守 第一級
(三)其ノ他ノスタヂオ装置ノ保守 第二級

なお、昭和22年度以降は、第1級から3級までの資格は試験が実施されず、放送受信級のみが昭和23年まで実施されました。

電気通信技術者資格の取得者数データ

以下の表は、資格制度開始から終了までの取得者数です。
出典:続日本無線史 第1部 p.986

電気通信技術者資格取得者数(試験取得)
年度 1級 2級 3級 3級
(無線)
3級
(有線)
放送級
昭和15年 7 15 30 53 24 129
昭和16年 4 10 29 78 34 155
昭和17年 5 10 43 152 38 248
昭和18年 8 15 49 212 66 350
昭和19年 4 13 25 179 41 262
昭和20年 2 6 5 42 9 64
昭和21年 1 3 9 85 3 200 301
昭和22年 1,455 1,455
昭和23年 414 414
昭和24年
合計 31 72 190 801 215 2,069 3,378

以下の表は、実務経験や学校卒業等による無試験取得者です。(1級通信士みなし、養成機関取得者を除く)

電気通信技術者資格取得者数(銓衡取得)
年度 1級 2級 3級 3級
(無線)
3級
(有線)
放送級
昭和15年
昭和16年 422 1603 7 141 774 2947
昭和17年 372 18 390
昭和18年 221 67 1 52 38 379
昭和19年 337 337
昭和20年 13 42 536 591
昭和21年 12 141 60 2 215
昭和22年 45 129 13 30 39 5120 5376
昭和23年 32 451 65 37 29 614
昭和24年 562 1993 626 2290 1781 123 7375
合計 1679 4781 712 3146 2663 5243 18224

以下の表は養成機関(認定校)卒業者のものです。昭和24年5月末時点

電気通信技術者資格取得者数(養成)
年度 1級 2級 3級 3級
(無線)
3級
(有線)
放送級
累計 5,903 3,352 525 9,780

以下の表は、第1級通信士のみなし取得の数です(昭和24年5月末時点)

電気通信技術者資格取得者数(第1級通信士)
年度 1級 2級 3級 3級
(無線)
3級
(有線)
放送級
累計 8,194 8,194

昭和24年 制度廃止

昭和24年9月5日 電気通信省令第4号 第29条にて制度が廃止されました。(適用は昭和24年6月1日遡及)

しかしながら、すぐ後の電波法成立に伴い無線系資格だけは復活することになります。

このとき、継承資格が無かったものは3級(有線)と放送受信級の2資格でしたが、放送受信級に限り、通商産業省の新設資格によって引き継ぎが行われました。

昭和26年5月20日 通商産業省告示117号による「ラジオ受信機修理技術者検定」制度創設時に、放送受信級の有資格者引き継ぎが規定され、昭和37まで存在していました。

無線技術士時代

昭和25年施行時

電波法成立により、新たに無線技術士資格が設けられました。このとき、電気通信技術者資格の有資格者は、無線技術士とみなされることになったのですが、3階級が集約されて2階級となっています。

これ以降、現代に至るまで、無線技術士は2階級のまま継続しています。また、1技の操作範囲は全く変わりません。

今から見ておかしな点といえば・・二技はレーダーが使えないさそうですね。レーダーを扱うには特殊無線技士を取得しなければなりません。この頃のレーダーは本来の意味で特殊無線だったのでしょうか。

昭和25年 法律131号 無線技術士
資格 操作範囲
一技
  • 無線設備の技術操作
二技
  • 第一級無線技術士の指揮の下に行う無線設備の技術操作
  • 空中線電力二キロワツト以下の無線電信及び五百ワツト以下の無線電話の技術操作

昭和27年改正

航空無線復活に伴って、若干の変更がありました。無線航行局の表現が追加。はっきりとはしませんが、二技はレーダーが使えそうです。

昭和27年 法律249号 無線技術士
資格 操作範囲
一技
  • 無線設備の技術操作
二技
  • 第一級無線技術士の指揮の下に行う無線設備の技術繰作
  • 空中線電力二キロワツト以下の無線電信及び五百ワツト以下の無線電話の技術操作
  • 無線航行局の無線設備の技術操作

昭和33年改正

操作範囲の規定法が電波法から無線従事者操作範囲令に移行。このときからアマチュア無線技士の操作範囲が明記されるようになりました。

昭和33年 政令306号 無線技術士
資格 操作範囲
一技
  • 一 無線設備の技術操作
  • 二 電話級アマチュア無線技士の操作の範囲に属する操作
二技
  • 一 次に掲げる無線設備の技術操作
    • イ 空中線電力二キロワツト以下の無線電信及びフアクシミリ
    • ロ 空中線電力五百ワツト以下の無線電話
    • ハ レーダー
    • ニ イからハまでに掲げる無線設備以外の無線設備で空中線電力五百ワツト以下のもの
  • 二 電話級アマチュア無線技士の操作の範囲に属する操作
  • 三 前二号に掲げる操作以外の操作のうち、第一級無線技術士の指揮の下に行うもの

昭和36年改正

2技の操作範囲の一部追加です。該当告示は分りませんが、告示の内容のものは操作可能になってます。便利な例外規定のはしりでしょう。

昭和36年 政令55号 無線技術士
資格 操作範囲
一技
  • 一 無線設備の技術操作
  • 二 電話級アマチュア無線技士の操作の範囲に属する操作
二技
  • 一 次に掲げる無線設備の技術操作
    • イ 空中線電力二キロワツト以下の無線電信及びフアクシミリ
    • ロ 空中線電力五百ワツト以下の無線電話
    • ハ レーダー
    • ニ イからハまでに掲げる無線設備以外の無線設備で空中線電力五百ワツト以下のもの
    • ホ イからニまでに掲げる無線設備以外の無線設備で郵政大臣が告示をもつて定めるもの
  • 二 電話級アマチュア無線技士の操作の範囲に属する操作
  • 三 前二号に掲げる操作以外の操作のうち、第一級無線技術士の指揮の下に行うもの

昭和57年改正

全資格の大幅改正に伴い、2技の表現変更です。放送局という表現になりました。

昭和57年 政令195号 無線技術士
資格 操作範囲
一技
  • 一 無線設備の技術操作
  • 二 電話級アマチュア無線技士の操作の範囲に属する操作
二技
  • 一 次に掲げる無線設備の技術操作
    • イ 空中線電力二キロワツト以下の無線設備(放送局の無線設備を除く。)
    • ロ 放送局の空中線電力五百ワツト以下の無線設備
    • ハ レーダーでイに掲げるもの以外のもの
    • ニ イからハまでに掲げる無線設備以外の無線設備で郵政大臣が告示で定めるもの
  • 二 電話級アマチュア無線技士の操作の範囲に属する操作
  • 三 前二号に掲げる操作以外の操作のうち、第一級無線技術士の指揮の下に行うもの

陸上無線技術士時代

平成元年改正

大改正に伴って、政令が全部改正されて名称が「陸上無線技術士」となりました。政令は「無線従事者操作範囲令」から「無線従事者の操作の範囲を定める政令」へ変更です。

ここからは、放送局の表現がテレビ放送局に限定されています。また、アマチュア無線技士の操作範囲が表から除かれ、別の表になりました。その部分の変更点としては電話級アマチュアが、第四級アマチュアに名称変更した程度です。

平成元年 政令325号 陸上無線技術士
資格 操作範囲
一陸技 無線設備の技術操作
二陸技 次に掲げる無線設備の技術操作
  • 一 空中線電力二キロワット以下の無線設備(テレビジョン放送局の無線設備を除く。)
  • 二 テレビジョン放送局の空中線電力五百ワット以下の無線設備
  • 三 レーダーで第一号に掲げるもの以外のもの
  • 四 第一号及び前号に掲げる無線設備以外の無線航行局の無線設備で九百六十メガヘルツ以上の周波数の電波を使用するもの

平成13年改正

操作範囲に変更はありませんが、根拠法が「電波法施行令」になりました。

平成23年改正

放送法の改正に伴って放送局の表現が変更されました。放送局が→基幹放送局となりました。

平成元年 政令325号 陸上無線技術士
資格 操作範囲
一陸技 無線設備の技術操作
二陸技 次に掲げる無線設備の技術操作
  • 一 空中線電力二キロワット以下の無線設備(テレビジョン基幹放送局の無線設備を除く。)
  • 二 テレビジョン基幹放送局の空中線電力五百ワット以下の無線設備
  • 三 レーダーで第一号に掲げるもの以外のもの
  • 四 第一号及び前号に掲げる無線設備以外の無線航行局の無線設備で九百六十メガヘルツ以上の周波数の電波を使用するもの

参考文献・更新履歴等

2011-07-20 Ver2.0
放送受信級の情報を追加
2011-09-07 Ver3.0
平成23年度改正を反映
2015-05-04 Ver3.1
CSS対応。文章校正
2015-05-06 Ver3.2
CSS修正。文章再校正
2015-12-23 Ver3.21
文章再校正(経産省→通産省誤記修正)