アマチュア無線技士の操作範囲の歴史

このページは、無線従事者資格の謎の別編である資料集です。特に、アマチュア無線技士の資格の操作範囲の変遷を対象としたものです。

あくまで、歴史的な資料としてまとめたものですので、現行法規上、有効なものかどうかは必ず法令集を参照するようお願いいたします。誤字・脱字などは少し多いかもしれません。最新の法令は政府の法令データ提供システムで閲覧が可能です。

その他の資格については、下記を参照ください

目次

共通事項

表中の資格名称の略語

電信アマと略したのは、電信級陸上特殊無線技士(旧名称 特殊無線技士(国内電信級))との違いを明確にするため。電話アマと略したのは、電話級無線通信士(現:4級海上無線通信士)と区別するため

戦前のアマチュア無線

私設無線局の中でも実験局(素人局)扱いの中でしたが、昭和15年までは資格制度がなく、逓信局での個別試験で開局が認められていたそうです。(参考:日本アマチュア無線外史 p.99)

昭和15年12月からは、新たに創設された電気通信技術者資格3級(無線)か、2級通信士以上の資格を要求されました。すなわち、資格制度としてはプロの正規資格を要求されたわけです。

もっとも、1年後の太平洋戦争開戦に伴い、運用は停止されました。

戦後になって、電波法が施行されることで、業務局以外のための特別な資格が初めて制定されることになりました。

電波法施行後のアマチュア無線技士

昭和25年の制定 (電波法施行)

このときはまだ、2階級制です。

昭和25年 法律131号
資格 操作範囲
1アマ アマチユア無線局(個人的な興味によつて無線通信を行うために開設する無線局をいう。以下同じ。)の無線設備の通信操作及び技術操作
2アマ 空中線電力百ワツト以下で五十メガサイクル以上又は八メガサイクル以下の周波数を使用するアマチユア無線局の無線電話の通信操作及び技術操作

昭和33年の制定 (新2級・電信・電話級の創設)

電波法で資格が4種に増えた(JARL要望)のに伴い、無線従事者操作範囲令で、それぞれの操作範囲が規定されました。旧2アマは電話アマとみなされ、5年内に移行試験に合格することで新2アマが与えられました。

昭和33年 政令306号
資格 操作範囲
1アマ アマチユア無線局の無線設備の操作
2アマ アマチユア無線局の空中線電力百ワツト以下の無線設備で二万八千キロサイクル以上又は八千キロサイクル以下の周波数の電波を使用するものの操作
電信アマ アマチユア無線局の空中線電力十ワツト以下の無線電信で五十メガサイクル以上又は八千キロサイクル以下の周波数の電波を使用するものの操作
電話アマ アマチユア無線局の空中線電力十ワツト以下の無線電話で五十メガサイクル以上又は八千キロサイクル以下の周波数の電波を使用するものの操作

昭和36年の改正 (新2アマ改正)

2アマは周波数制限が無くなり(限定解除!)電信アマ・電話アマの周波数範囲が広がりました。表現も同じ周波数でキロサイクルがメガサイクルになったりしてます。

昭和36年 政令55号
資格 操作範囲
1アマ アマチユア無線局の無線設備の操作
2アマ アマチユア無線局の空中線電力百ワツト以下の無線設備の操作
電信アマ アマチユア無線局の空中線電力十ワツト以下の無線電信で二十一メガサイクル以上又は八メガサイクル以下の周波数の電波を使用するものの操作
電話アマ アマチユア無線局の空中線電力十ワツト以下の無線電話で二十一メガサイクル以上又は八メガサイクル以下の周波数の電波を使用するものの操作

昭和47年の改正 (ヘルツ単位系導入)

ここでは周波数表現がヘルツに変わりました。それ以外は何も変化はありません。昭和47年法律111号 「許可、認可等の整理に関する法律」により電波法の単位系が変わった影響のようです。

昭和47年 政令268号
資格 操作範囲
1アマ アマチユア無線局の無線設備の操作
2アマ アマチユア無線局の空中線電力百ワツト以下の無線設備の操作
電信アマ アマチユア無線局の空中線電力十ワツト以下の無線電信で二十一メガヘルツ以上又は八メガヘルツ以下の周波数の電波を使用するものの操作
電話アマ アマチユア無線局の空中線電力十ワツト以下の無線電話で二十一メガヘルツ以上又は八メガヘルツ以下の周波数の電波を使用するものの操作

昭和57年の改正 (電信アマの電話開放)

電信アマでも、電話ができるようになりました。この時点で、電信アマが電話アマの上位資格になりました。

昭和57年 政令195号
資格 操作範囲
1アマ アマチユア無線局の無線設備の操作
2アマ アマチユア無線局の空中線電力百ワツト以下の無線設備の操作
電信アマ アマチユア無線局の空中線電力十ワツト以下の無線設備で二十一メガヘルツ以上又は八メガヘルツ以下の周波数の電波を使用するものの操作作
電話アマ アマチユア無線局の空中線電力十ワツト以下の無線設備で二十一メガヘルツ以上又は八メガヘルツ以下の周波数の電波を使用するものの操作(モールス符号による通信操作を除く。)

平成元年の制定 (3アマ・4アマの創設)

電波法の大改正に伴って、「無線従事者操作範囲令」が廃止され、代わりに「無線従事者の操作の範囲を定める政令」となりました。

資格は1~4アマの4種類となり、電信アマは3級に、電話級アマは4級とみなされました。本改正で、法律上の表記が「アマチユア」から「アマチュア」になりました。平成元年からは、拗音・促音を小さく書くよう内閣告示が適用されたからです。

3アマは10Wから25Wに最大電力が増加、周波数も18MHzからになりました。

平成元年 政令324号
資格 操作範囲
1アマ アマチュア無線局の無線設備の操作
2アマ アマチュア無線局の空中線電力百ワット以下の無線設備の操作
3アマ アマチュア無線局の空中線電力二十五ワット以下の無線設備で十八メガヘルツ以上又は八メガヘルツ以下の周波数の電波を使用するものの操作
4アマ アマチュア無線局の空中線電力十ワット以下の無線設備で二十一メガヘルツ以上又は八メガヘルツ以下の周波数の電波を使用するものの操作(モールス符号による通信操作を除く。)

平成7年の改正 (2アマ・3アマの電力倍増)

2アマと3アマは単純に電力が倍に。また、4アマはVHF以上に限りですが同じく倍に増えました。本改正が令和1年現在の最終形です。ただし平成13年(2001年)からは政令が「無線従事者の操作を定める政令」から「電波法施行令」となっています。

平成7年 政令375号
資格 操作範囲
1アマ アマチュア無線局の無線設備の操作
2アマ アマチュア無線局の空中線電力二百ワット以下の無線設備の操作
3アマ アマチュア無線局の空中線電力五十ワット以下の無線設備で十八メガヘルツ以上又は八メガヘルツ以下の周波数の電波を使用するものの操作
4アマ
  1. アマチュア無線局の無線設備で次に掲げるものの操作(モールス符号による通信操作を除く。)
    1. 一 空中線電力十ワット以下の無線設備で二十一メガヘルツから三十メガヘルツまで又は八メガヘルツ以下の周波数の電波を使用するもの
    2. 二 空中線電力二十ワット以下の無線設備で三十メガヘルツを超える周波数の電波を使用するもの

平成13年の制定 (法令変更)

操作範囲に変更はありませんが、「無線従事者の操作の範囲を定める政令」が廃止され、「電波法施行令」になりました。