本法令は、昭和15年から昭和24年までの間のみ制度が存在した、電気通信技術者資格についての規則です。日本の電気通信事業は、政府専掌主義にもとづき電信法並びに無線電信法が制定され、逓信省が事業を独占運営していました。
しかしながら、第一次大戦や震災、恐慌などの影響で政府資本には限界が出ており、民間資本を取り入れる形で事業運営を進めていったのが大正末期以降のことです。ただし、法的に事業運営は政府でなくてならないため、通信設備事業会社という運営形態でした。いわば政府専用の設備アウトソーシング企業だったわけです。
本資格は、日本無線電信(株)と国際電話(株)が特別法によって昭和13年に合併、新たに国際電気通信(株)が設立され、業務拡大に伴って制度化されたものです。
それまでは、国際無線通信に限定されていましたが、その頃から日満無装荷ケーブルを皮きりに、有線分野も手掛けるよう政府方針が定められ、その一環として「電気通信技術者」という資格制度が創設されたのです。この他にも放送局(NHK)などにも資格が要求されました。
このような経緯から純粋な国内資格であり、無線通信士のような国際的な取極めによる資格ではありません。しかしながら国内法によって通信資格規制をする嚆矢になったと考えられ、現行の無線従事者・工事担任者・電気通信主任技術者の各制度はここに源流があったとみなせます
その後、昭和20年の敗戦を機にGHQから会社の解散と国営回帰の方針が出され、資格制度自体も昭和24年の電気通信省発足と同時に廃止。一部の無線部分だけが電波法上の無線技術士制度として継承されていったのでした。
ちなみに、現行の第1級総合無線通信士が、第2級陸上無線技術士の操作範囲を含む理由は、本法令(第17条)によるもので70年以上継続していることになります。
その後長らく忘れ去られていましたが、昭和60年の通信民営化に伴って、「電気通信主任技術者」制度という類似した資格が創設され、現在に至るのです。
昭和十五年三月三十日
遞信大臣 勝 正憲