電圧方程式と電流方程式に伝送路端の条件を与えた場合の電圧電流を求めていきたいのですが、その準備段階として2式を結ぶ関係式が必要となってきます。
一般解は、それぞれまず、式(9.3)の電圧式を距離で微分すると、式(10.1)の結果が得られます。
つまり、電流式(9.4)は電圧の積分定数 \(V_1,V_2\) を用いても表現が可能となるわけです。
電圧に係数 \(\sqrt{G/R}\) を掛けると電流になっているので、この量は直流コンダクタンス(交流ならばアドミタンス)の単位をもつことがわかります。
ただし、一般に[S]が単位となるコンダクタンス表現よりも、その逆数である抵抗値 [Ω] で表すことが好まれる事情から、その係数を \[ Z_c = \sqrt{\frac{R}{G}} \tag{10.3} \] とおいて、 \[ I(x) = \frac{1}{Z_c} \left( V_1 e^{-\alpha x} - V_2 e^{\alpha x} \right) \tag{10.4} \] と表現することが多いです。教科書によっては \(Z_0\) と表現されることも。
この \( Z_c\) は「特性インピーダンス」 (Characteristic Impedance) と呼ばれる量になります。交流であれば複素数ですが今回は直流のため実数値しかとりません。
無限抵抗ラダー回路や多段T形回路の要素に現れた反復インピーダンス \(Z_k\) と同じ性質をもつ量でもあります。伝送路の特性を決めるもっとも重要な定数であり、 特に直流においては。伝送路長 \(l\) , 減衰定数 \(\alpha \) , 特性インピーダンス \( Z_c\) の3つの量しかありません。
では、 \(R,G\) があまり重要ではないのかと云うとそうではないです。それらの相互関係を考えることで、これまでに現れた4つの伝送路定数 \( R,G, \alpha ,Z_c \) のうち、2つの量があれば全て換算ができてしまうことが分かります。
式(9.3)と式(10.4)の比較から、積分定数 \(V_1,V_2,I_1,I_2\) 相互の関係性が明確になります。
特性インピーダンス \(Z_c\) が既知であれば、電圧、電流を相互変換する係数として利用できるため、頻繁に使われる関係式です。
なお、 \[ I_2 = - \frac{V_2}{Z_c} \] と、第2項だけは マイナスの係数が付くので注意してください。これは、基準位置(x=0) へ向かってくる電流の成分が「負の値」を持つのが理由です。
電圧は両方が同符号の電荷であれば電位同士が加算されるのでプラスとなり、そこから導かれる電流には方向性があるので打ち消しあうという物理的解釈になります。
もっとも正電荷と負電荷ならば電圧計算上は打消しあうことになるでしょうが、そこから導かれる電流は逆に強め合う意味があります。 もし電流を基準とするならば、電圧式の第2項側にマイナス記号が付くことに。あくまで電圧基準にするか電流基準にするかで符号が変わる相対的な関係であることに注意しましょう。
次ページでは、これらの関係式を使って直流伝送路の状態を求めていきます。
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