電気通信主任技術者試験に挑戦しようとする方が最初に直面する困難といえば、問題集や参考書籍の少なさです。 世の中、選択肢が多すぎて悩む試験も多いものですが、本試験に限って言えば「これさえやれば合格する」といった書籍は見当たらず、 個々の試験範囲について専門書を独自に捜さなければなりません。
ここでは、現在入手可能な教科書などについてなるべく紹介していこうと思っています。その他、「受験体験談」やSNSにも目を通すとよいでしょう。
2021年度から専門科目がなくなり、現時点では新試験に対応した書籍はほとんどありません!!
当面は、旧専門科目も含めある程度満遍なくやり込む必要があるなど対策は確立していない状況です。
ネット上でよく見かけるのは「過去問演習とネット検索だけで受かる」という意見です。実質的に正しい意見だとも思うのですが、そのような方法が適しているか否かは、受験者のレベルに左右されるものと思います。
最もやってはいけないのは、過去問演習をやらないうちに参考書籍を揃えてしまうことだと考えます。
最初はとりあえず公式の過去問に取り組んでみて、自分にどのような知識が必要かを把握した上で参考書籍を買う方が安全です。他の資格とは違って、『いきなり教科書を買い込んで』という方法は向きません。
また、教科書類はあくまで辞書代わりと割り切るべきです。すみずみまで勉強して実力を付けても、実務に役立つが試験に落ちるという悲しい事態が待っています。この試験自体がある意味で「畳の上の水練試験」のようなものですので、海で自由に泳げる人でも、畳の上で行われる独特の水泳試験に挑まねばなりません。
一部の書籍については、Web上で通俗的な名称があります。以下は、その主要なものです。
2022年時点での過去問題集は実質1社のみです(オーム社)。
まずは買っておきたい基本の過去問解答集。いまだ電子書籍がない。およそ2年に1回の頻度で出版。2022年から日本理工出版会廃業のためオーム社から発行されるようになりました。
試験制度改正によって本書1冊で2021年以後に限り全科目をカバーできています。(別な視点で見れば、2020年までの旧専門科目は未掲載である。)。「共通編1」という古いシリーズ名の名残はあるが、もうこれ1冊しか存在する余地がない。
かなり昔(1980年代)から発行されていて、「黄色本」「黄色の問題集」で通じる。個人的には「黄表紙」と呼んでいたが、それだと江戸時代っぽくなってしまうのが難点。
オーム社移管版(2022年版)は2018年7月期から2022年度第1月期までを収録(ただし、2020年7月は中止となっているため問題は存在しない。)
オーム社移管後の内容は詳細未チェックのため何とも言えませんが、少なくとも理工出版会版の解説には残念なものも混じっていることがあり、試験の内容をざっと把握したり試験形式に慣れるまでのトレーニング用としての使い方がおすすめ。また、問題種別ごとには分類されていないため純粋な過去問集であることに注意されたい。
近年は改版の境目などの入れ替え時期に、市場在庫が不足するせいかフリマやネット書店で極端に高騰する現象が見られます。
法規はとにかく過去問こなすことが肝要と言われますが、1冊ぐらいまとまった書籍が手元に置いておくと楽になりやすいです。(ひたすら過去問回すのは否定しない。)
その昔に「法規突破読本」という書名だった頃から、過去問とこの参考書だけで法規科目は大丈夫と言われる鉄板本。法令集代わりにもなります。ちなみに、旧版の『法規突破読本』の頃から数えると29版目に相当し30年を超えるロングセラーです。
最近の売れ筋商品。過去問ベースに法規条文を整理した試験対策演習に特化した本です。俗にイルカ本とも。初版が2014年9月発行で2015年10月に2版,2018年10月に3版が発行されました。
ただ残念なことに、最新問題を収録した版がここ4年間出版されておらず、この本だけを読んで済ませるというスタイルが厳しい状況になってきました。
姉妹本として、フクロウ本(必勝テキスト)もありますが、こちらの方は購入者からの情報がほとんど無いです。
既存の設備参考書は試験制度改正の影響で2021年度から不足分野が大幅に出ています。設備科目に旧専門がそこそこ取り入れられて問題数も増えているため、廃止された専門科目分野もある程度なめておく必要も。
新制度未対応。2018年3月に改訂2版が出たっきり。近年の売れ筋で設備対策に特化した過去問を中心とした攻略書。コンパクトにまとまっているので持ち運びやすく、安くて解説もそこそこしっかりしている。扉絵から「クジラ本」とも。
内容自体の評判は良いのだが、現在の試験制度では大幅に内容不足するのが難点。(クジラ本+カメ本のペアは必須。)
新試験制度対応で最初に出版された翔泳社本。電子版があるのと法規・設備が一体になっているのは強味。同社出版のNTT-LS本(赤本)と類似した書影ですが、書名から推測するに改訂版の扱いに近いようです。
内容は網羅的なもので初級者向けの基礎的な説明はあるものの現実の試験対応としては力量不足が否めず、過去問と併用していくべきイメージです。
試験に特化し、旧設備管理と法規をまんべんなく網羅した、NTTラーニングシステムズの参考書。俗に『赤本』と呼ばれる。
全体的にまとまっているので入門書的な使い方が適しているものの、2014年以後の改版がなく新制度には全く対応していないこと。それとやや高価なのが難点。
同じオーム社の「これなら受かる」と違う部分は、過去問よりも解説重視とのことです。扉絵から『オウム本』とも。今はもう役目を終えた感じかな。
総合的な教科書(というよりは辞書)として大昔から定番。およそ10年に1度ぐらい改訂される。大昔は「電気通信概論」という名前でした。全く知識が無い人にはオススメできないですが、全体的な通信技術知識を勉強するにはちょうどよい教科書です。
分量がとても多く、760ページあってこの値段なのでお得感あり。過去問が分からなかったら、辞書代わりにこの教科書を引くというのが主な使い方。間違ってもこれで1から勉強しようとしてはいけない。
試験用ではないので、通信技術に直接関係がない品質管理や信頼性関連などは掲載されていません。
2022年の出版社廃業によって絶版状態です。2022年現在、唯一といえる線路系参考書。旧版の評判は極めて悪かったのですが、2011年発売の本書については、そこそこの評判ではあるものの。受験体験談(tender様)やAmazonレビューなど。
23年前の1998年に発行され、いまだに買えてしまう地雷本の代表格です。現在の試験に(というか発行された頃ですらかなり怪しかった)何も役立ちません。
線路設備向け。
「NTTの方々が執筆、頻繁に改版される至高の種本。例えば平成23年度第1回 線路設備の18点分くらいが該当。(『200のポイント』より見やすく、写真も豊富、線路全般に適している)」(sumito様) ※註釈:2版のレビューです。
(2011年が2版、2016年が3版です)
とにかく安い。それでいて試験範囲をそれなりに「薄く広く」網羅する本。初心者ならコスパ良好なので、この本がよいかも。
少々高いが、事業者サイドに立ったIP系の辞書的な本。NGN,IMS,移動体,SIP,RTP,などのNW全体、トランスポート系(BGP,MPLS)やIP共通線関係まで扱っていて範囲が広い。
難点はやたらと細かいプロトコルの辞書部分が後半の大部分を占めているところ。そろそろ新しい版数が出ないものか。
良書(試験後に気付いた)。強度率、度数率、移動式クレーン、玉掛け、高所作業、足場、酸素欠乏、硫化水素、安全担当者の分類、KYTなど多数掲載。ポケット版の巻末に、テキスト版と同じ内容である事が記載されているため、最新の出版年かつポケット版がベスト、安価でもある。(sumito様)
通信系初心者なら工事担任者の上記のような教科書がわりと役立つことが多いです。工事担任者を受験後に電通主任へステップアップされた方が多い都合上、工担用教科書をそのまま使ったというケースが多く見られます。(大抵はリックテレコム本)
免除割合が高いせいか、全般的に参考書籍が少ない科目。さっさと工事担任者(特にDD1種)を取得して永久免除を受けた方が良いとの意見が多い科目。
過去問中心でもよいのですが、本科目は安定した出題であり、2018年にオーム社から新刊も出版されていい感じです。
扉絵から「シャチ本」とも。評判は上々の模様。2018年4月に第2版が発行されました。
試験本番で出題された問題が、このテキストに掲載された問題と全て同じだったので驚きました。(政令指定都市電気職様)
工担基礎用ですが、いきなり電通主任レベルを受けるのがきつい場合にはここから進めてもよいでしょう。
旧専門科目が廃止されたものの、結局は設備管理に取り込まれてしまうだけなので、比重は大きく下がるもののそれなりに対策しなくてはならない分野です。
カメ本と呼ばれている。伝交専門5科目が全部網羅された過去問解説集で、平成26年~27年の2年間を収録(480ページ)。そろそろ新版が欲しいと思ってるうちに専門科目自体が廃止になってしまいました。
新設備管理科目の対策にちょうど良いのではないかと思います。
日本理工出版会のテキストよりはだいぶわかりやすく、勉強しやすかったです。(政令指定都市電気職様/通信電力受験)
伝送、交換、データ通信は、6割(大問3つ)が同一問題が出題されて、残りの4割(大問2つ)が本来の各専門分野的なものです。 以前に比べ出題範囲がかなり重なってきました。(全分野がデータ通信へ収束中)
前掲した「やさしいNGN/IPネットワーク技術箱」なども役立つ科目
下記の他に、電気通信工事担任者の会で独自発行されている書籍(書店流通していないセミナー本)もありますが、購入者やセミナー受講者からの報告が不足しています。情報募集中です。
もはやTCP/IP入門のデファクトスタンダード。最近は、ちょっぴり試験の種本にもなっている模様。
電気通信工事担任者の会(任意団体として歴史が長くデ協とも関係の深い老舗だったりする)が独自に発行している書店流通していないセミナー本
「中身自体は悪くないと思います。イメージ的には赤本を専門に特化して作成した感じでしょうか。伝送・交換・データ通信共通して使える内容で、必要のないところは読み飛ばして使います。過去問をベースに解説を網羅しているようで、過去問と見比べるとまさしく問題文を解説するように文面が構成されています。」(ガッチャマン様)
旧専門科目ではデータ通信を選択される方が非常に多かったものですが、現在の設備でも比重は高く、情報処理技術者試験の参考書・教科書(特にネットワークスペシャリスト/応用情報)が役立ち、また、そのまま使えます。
TCP/IP系やソフトウェア系の経験者は過去問さえあれば、特段、専門テキストは購入する必要性はないでしょう。ここ数年、検索エンジンに聞くのが一般的になりつつあります。
マスタリングTCP/IP入門編と応用情報あたりを揃えておけば、設備のサーバ分野やソフトウェア関連はおおむねカバーできる見込み
「設備科目と同様に、工事担任者,応用情報技術者,マスタリングTCP/IPの書籍がそのまま使えました。」(だーはま先生様)
定期的に出版される書籍なので、上記の情報に関係なく最新版を探して読みましょう。
下記のほか、電験の「電力/送配電工学」分野に関する書籍には、同じ電柱を使う関係上なのか、電線の力学など共通する部分もあり、それなりに使えるものもあります。
理工本の参考書の中ではWeb上の評判が良い本。
評判の高かった「新版 やさしい光ファイバ通信」から→「すべてが解る!光ファイバ通信」→本書と改訂が続けられています。試験用に完全マッチしているわけではない事に注意してください。コメント募集中。
通信線路の光ファイバ種本の一つ。平成27年度の問題をサンプルに調べてみても、本書がネタ本になっている問題が確認できる。
ただし、本書は研究書のイメージが強く、試験用ではありません。どちらかと言えば、意味不明な問題の謎解き用としての用途が主になります。
昔からの定番入門書です。古い割には最近の受験者にも好評。ただし、発刊から20年以上経過したため、ほぼ絶版です。
この分野は、電通主任の中でも最もマイナーで関連書籍が手に入りにくいです。過去問が最良の教科書と化しています。
前書きに、電気通信主任(水底線路)向けの記載があるとのこと。(sumito様)
良い、一級品の種本だが、値段が7,000円程度(sumito様)
ここの分野は「通信系」というカテゴリの中では最も特殊な部類ですが、 分野の基礎自体は建築土木系そのものであるため、建築系力学や土木工学関係の書籍が役立ちそうです。出題内容が素直で最も簡単だという噂もあり。
種本、散らばっていて読みにくい。(sumito様)
△ 昔は重宝したのかもしれないが、、、索引もなく使いづらい。(MYU様)
(初心者向け)マンガのおかげで理解が進みます。おすすめの良本。まずはここから。(MYU様)
◎ モーメントの計算が苦手な方はこちら!おすすめの良本。(MYU様)
ただし、これだけでは実際の計算問題の対処は難しいとのこと。
◎ 写真や図解が多く、とてもわかりやすい。索引も充実、辞書的な使い方もできる。(MYU様)
◎ 土質試験が詳しく説明されている。土圧などの計算式は理解できなくても問題ない。(MYU様)
入門書として非常によくできた本だと思う。試験までのレベルには及びませんが、共通線なども詳しく触れられています。デジタル化や移動体、IP電話(ひかり電話)などもあり。姉妹書には携帯電話編もあってかなりの良書。
現在、第2版。具体性に富んだIP系NWの良書。マスタリングTCP/IPと組合わせると非常に良いかも。日経BP本は何だかいい本出してるイメージ。いままでちょっとあやふやだったりした部分も、この本を読めば、そこそこすっきりする感じです