T型回路の無限分割(2)

T型回路を無限段に分割するとどうなるか

前ページでは、T型抵抗回路を同一特性を保ったまま多段分割していくとどうなるかという計算をしてみました。当然のごとく、それを無限段に至るまで分割数を増やしていくのも自然な流れでしょう。

すると、あまり嬉しくない事態が待っています。「T型回路段数のn」を十分に増やしたとき…具体的には1千程度から、百万程度にとりあえず分割してみると分かるのですが、段数が増えるに従って1つの単位段あたりの特性の意味が薄れてきます。

先ほどと同じ、元の1段が R=1[Ω] と r=4[Ω]の抵抗で構成されたT型回路を例にとります。仮に100万分割すると、各段の抵抗はそれぞれ \begin{eqnarray} R &=& \frac{3 \ln 2}{2 \times 10^6} = 1.0397 \mathrm{[\mu \Omega]} \\ r &=& \frac{3 \times 10^6}{\ln2} = 4.3281 \mathrm{[M \Omega]} \end{eqnarray} となる計算です。

T-type Circuit division_1
fig6.1 T型回路を100万分割した場合の例

直列抵抗値Rは非常に小さくなり、並列抵抗値rは極端に大きくなるのは当然のこと。ただ、一応は各段の諸量を計算することは可能なのですが、これを無限に分割していくことを考えると \begin{eqnarray} R_{\infty} &=& 0 \mathrm{[\Omega]} \\ r_{\infty} &=& \infty \mathrm{[\Omega]} \end{eqnarray} に収束して行きそうなのです。これでは、各1段あたりの物理量という意味合いが完全に消えてしまうばかりか、0Ωや∞Ωという極端な値が集合することで有限の総合特性に落ち着くとことになってしまいます。

しかしながら、ゼロΩを幾ら足し合わせてもゼロはゼロなわけで、これは矛盾が発生していると見るべきでしょう。

すなわち、T型回路は「有限の自然数n」で定義できる範囲での分割しかできないということです。無限段のT型回路縦続接続(抵抗ラダー)は考える事ができても、有限の特性をもったT型回路を無限分割するというのはちょっと無理がありそうです。

無限段に近づく時のT型回路の諸量はどうなのか

では、有限ではあるが段数nが極めて大きい場合を考えてみます。とにかく1億分割だろうが1兆分割だろうが、∞でなければ有限は有限。

このとき、1段あたりのRやrは計算可能な有限値ではあるのですが、あまり重要とは思えなくなります。このようなときの評価量としては、縦続回路全体のRやrの合計値という測度が役立ってきます。


fig6.2 縦続T型回路における合成抵抗値の考え方

先ほどの例と同様に、1段が R=1[Ω] と r=4[Ω]のT型回路を分割していった場合のことを考え、全体の直列抵抗合計値を \( R_t = 2 n R \) 、全体の並列抵抗合成値を\( r_t = r/n \)とおくと、 \begin{eqnarray} R_t &=& 2nR = 2n \frac{3 \ln 2}{2n} = 2.0794 \mathrm{[\Omega]} \\ r_t &=& \frac{r}{n} = \frac{3n}{n \ln 2} = 4.3281 \mathrm{[\Omega]} \end{eqnarray} となって、意味の分かりやすい数値に落ち着くことになります。しかも、これは十分に大きな分割段数nを仮定さえすれば、分割数に関係ない値です。

無限を「目指して」回路を分割していくとき、各段ごとの抵抗値の意味が薄れていく代わりに、全体の合計抵抗値は分割数にほぼ依存せず一定値を保つわけです。

しかしながら、やはり無限分割した状態を考えるには至りません。この原因は主として独立した回路が整数個並んでできるという電気回路構成にあり、連続した実数を相手とする微積分の考え方が導入できない(近似にとどまる)ことにあるのでしょう。

ここまでが集中定数回路の限界です。次ページからは、微積分が可能な滑らかな回路構成(分布定数回路)を考えていきます。

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