3.電信方程式の導出

3.1 はじめに

ここでは回路方程式から電信方程式に至るまでの計算を行います。ここはほとんど数学の世界になってしまうので、電気回路のイメージから外れてしまいやすい個所。しかも、授業では、よく省略されてしまう所でもあったりします。

一般的な分布定数回路の応用では不要なことも多いのですが、過渡現象を論じるときの基礎となる部分にあたります。

3.2 電圧のみの偏微分方程式をつくる

の式 \begin{eqnarray} -\pdiffA{v}{x} &=& R \ i + L \pdiffA{i}{t} \tag{2.13a}\\ -\pdiffA{i}{x} &=& G \ v + C \pdiffA{v}{t} \tag{2.13b} \end{eqnarray} が分布定数回路を表現する最も基本的な関係式なのですが、この二つの式を使って電信方程式を導きます。電信方程式(Telegrapher's Equation)とは、伝送路の特性を表すもっとも基本的な偏微分方程式で、あらゆる分布定数回路の性質はこの方程式から導かれます。

まずは、電圧式(2.13a)について、xでもう一度偏微分すると、 \begin{eqnarray} -\pdiffB{2}{v}{x} &=& R \ \pdiffA{i}{x} + L \pdiffC{v}{t}{x} \tag{3.1} \end{eqnarray} また、式(2.13b)を時間tにて偏微分すると \begin{eqnarray} -\pdiffC{i}{x}{t} &=& G \ \pdiffA{v}{t} + C \pdiffB{2}{v}{t} \tag{3.2} \end{eqnarray} となります。この式(3.2)は、電圧vが実数で連続な関数であれば偏微分の順序(x→tとt→xの順)を入れ替えることができるので、 \begin{eqnarray} -\pdiffC{i}{x}{t} = -\pdiffC{i}{t}{x} \tag{3.3} \end{eqnarray} と書き換えておきます。(細かい条件はあるが、電気回路で使う場合には問題なくできると考えてよい。)

ここで、(3.1)に(2.11)の下側の式と(3.2)を代入すれば \begin{eqnarray} -\pdiffB{2}{v}{x} &=& R \ \pdiffA{i}{x} + L \pdiffC{v}{t}{x} \\ &=& R \ \pdiffA{i}{x} + L \pdiffC{v}{x}{t} \\ &=& R \left( -Gv-C \pdiffA{v}{t} \right) + L \left( -G \pdiffA{v}{t} -C \pdiffB{2}{v}{t} \right) \\ &=& -LC \pdiffB{2}{v}{t} -(LG+CR) \pdiffA{v}{t} -RGv \end{eqnarray} 結果として、 \begin{eqnarray} \pdiffB{2}{v}{x} = LC \pdiffB{2}{v}{t} +(LG+CR) \pdiffA{v}{t} + RGv \tag{3.4} \end{eqnarray} とまとめられます。

式(3.4)は電圧の関数\( v=v(x,t) \)のみで表した2階線形偏微分方程式であり、一般に電信方程式と呼ばれます。この方程式を種々の条件を課して解くことにより、さまざまな伝送線路の性質が明らかになります。

一見、何がなにやら意味不明なこの式なのですが、実は、電圧が一次元の波動として伝送線路を伝搬していく現象を表しており、波動方程式の一種に分類されます。

3.3 電流のみの偏微分方程式をつくる

3.2節と同じようにして、電流に着目した方程式を作ることができます。再び(2.13)式 \begin{eqnarray} -\pdiffA{v}{x} &=& R \ i + L \pdiffA{i}{t} \tag{2.13a}\\ -\pdiffA{i}{x} &=& G \ v + C \pdiffA{v}{t} \tag{2.13b} \end{eqnarray} のうち、(2.13b)部分を、距離xでもう一度偏微分し、 \begin{eqnarray} -\pdiffB{2}{i}{x} &=& G \pdiffA{v}{x} + C \pdiffC{v}{t}{x} \tag{3.5} \end{eqnarray} .

また、(2.13a)を時間tで偏微分して、 \begin{eqnarray} -\pdiffC{v}{x}{t} &=& R \pdiffA{i}{t} + L \pdiffB{2}{i}{t} \tag{3.6} \end{eqnarray}

(3.5)に(3.6)と(2.13b)を代入すれば、 \begin{eqnarray} -\pdiffB{2}{i}{x} &=& G \ \pdiffA{v}{x} + C \pdiffC{v}{t}{x} \\ &=& G \ \pdiffA{v}{x} + C \pdiffC{v}{x}{t} \\ &=& G \left( -Ri-L \pdiffA{i}{t} \right) + C \left( -R \pdiffA{i}{t} -L \pdiffB{2}{i}{t} \right) \\ &=& -LC \pdiffB{2}{i}{t} -(LG+CR) \pdiffA{i}{t} -RGi \end{eqnarray} すなわち、 \begin{eqnarray} \pdiffB{2}{i}{x} = LC \pdiffB{2}{i}{t} +(LG+CR) \pdiffA{i}{t} + RGi \tag{3.7} \end{eqnarray}

(3.7)式は電圧方程式(3.4)とまったく同じ形をしています。すなわち電流の電信方程式も一次元の波動方程式となり、電圧も電流も同じような振舞いをすることがわかります。

3.4 電信方程式のまとめ

\begin{eqnarray} \pdiffB{2}{v}{x} &=& LC \pdiffB{2}{v}{t} + (LG+CR) \pdiffA{v}{t} + RGi \tag{3.4} \\ \pdiffB{2}{i}{x} &=& LC \pdiffB{2}{i}{t} + (LG+CR) \pdiffA{i}{t} + RGi \tag{3.7} \end{eqnarray} 上記、(3.4),(3.7)の2式は、分布定数回路の全てを表す波動方程式です。あとは、この式をどのような条件で解いていくかが問題になるのですが、偏微分方程式の性質上、解は簡単には求まらず、種々のテクニックが用いられます。