ここでは電気回路モデルから、分布定数回路の基礎方程式を導くまでの計算を行います。このあたりは電気回路というよりも、数学の計算がメインになってしまうかもしれません。
数式は極力、省略しないで、計算過程が分かりやすいよう努めましたが、お気づきの点や、分かりにくい個所がございましたら、メールにてご連絡いただけると幸いです。
分布定数回路の電気回路モデルは図3のように、回路全体に分布している電気回路要素を表すため、微小距離で切り取った伝送線路は集中定数回路で近似できるように見えるという前提で成り立っています。
図3 分布定数回路の一般的表現
図3は分布定数回路を近似的に表したものであって、実際にこうなっている訳ではありません。図3と同じものを集中定数回路で組もうとしても、出来上がるのは低域フィルタ(LPF)です。そうなっては、高周波伝送は不可能になりますね。あくまで一様に分布していることが重要で、集中定数のような不連続があってはならないのです。
しかしながら、微分の考え方を使うことで解析が可能となります。無限小の距離ではさしもの分布定数も集中定数的に扱えるようになってきます。次節以降は、そのモデル解析をひたすら続けていくことになります。
図6 分布定数回路における微小部分の等価電気回路
図3から一部分を抜き出したのが図6の回路です。きわめて微小な距離
図6における注意点ですが、LRCGはいわゆる普通の電気単位ではなく、単位長あたりの電気単位となります。また、電圧vと電流iはどちらも距離xと時間tの2変数関数
通常の電気回路では時間tのみの関数を考えるので、連立の常微分方程式になり、比較的容易に解くことができます。一方、分布定数回路では距離xの変数も導入されるため、2変数関数となり、その結果、連立の偏微分方程式になってしまいます。
まずは、記号的な定義を先にしておきましょう。
最初は図6を元に、入出力の電位差について方程式を立てることにします。
入出力の電位差を式(3.2),(3.3),(3.4)をまとめて、回路方程式を組み立てると
ここで、式(3.5)の両辺を
次に、
最終的に式(3.6),(3.7)から、
距離に応じた電圧降下の傾きは、抵抗による電圧降下に加え、電流の変化に応じたインダクタンスの効果によるという意味です。
一見複雑な表記に見えるかもしれませんが、式(3.8)を電気回路でよく使われる表現(フェーザ表記又はフーリエ変換解)に直すならば、
前節と同様の手順で進めます。まず入出力の電流差分を
そして、分布漏洩コンダクタンス
結果として、式(3.9),(3.10),(3.11)をまとめた回路方程式は
この式(3.12)を先ほどと同様、両辺を
次に右辺ですが、先ほどとは異なり極限をとるべき
結果として求められた電流の距離分布に関する偏微分方程式は
この式(3.16)も分布定数回路における最も基本的な方程式です。
また、フェーザ/フーリエ変換の表現形式に直せば、