資料: 昔の工事担任者試験について

はじめに

あまり、意味のない資料ですが歴史的資料として置いときます。本内容は昭和50年頃の資格本と各種情報を参考にした抜粋で、国が直接実施する試験ではないものの、一応は「国家試験」に分類されています。

この頃は、公衆電気通信法のもとに、日本電信電話公社(NTT)、国際電信電話株式会社(KDD)が独占的に電気通信サービスを行っていた時期で、それ以外は有線放送電話などの、例外的なものしか存在しませんでした。

電電公社の認定制度ができたのは昭和28年ですが、昭和46年以後、段階的に実施された回線開放政策の影響で資格の数が増えていきます。どの段階にせよ、電電公社/国際電電が保有する公衆網に、PBXやデータ通信端末といった自営設備を接続するのに必要な資格という扱いが見えてきます。

最終的には昭和59年に電気通信事業法が成立した際、全ての端末とPBXを対象とした資格として政府が実施する国家試験となり、それ以前に取得した資格も引き継ぎがなされています。

※2019年 「工事担任者の歴史」を新たに作成しました。
姉妹編 「国際公衆電気通信設備工事担任者についての歴史メモ」もあります。

法令上の引き継ぎ(昭和60年)

○昭和60年 郵政省令第二十八号(工事担任者規則)
  1. 附則
    1.  法施行の際現に旧公衆法第五十五条の十七若しくは第百五条第七項の規定又は第百八条の二に規定する契約約款の条項に基づく工事担任者の資格(以下「旧資格」という。)を有する者(以下「旧資格者」という。)は、法附則第十四条第二項の届出をしようとするときは、附則別表第一号に定める様式の届出書を所轄総合通信局長を経由して総務大臣に提出しなければならない。この場合において、同項の規定による届出は、第三十七条に規定する資格者証の交付の申請とみなす。
    2.  旧資格者は、前項の規定による届出をした場合において、それぞれ次の表の上欄に掲げる旧資格の区分に従つて、下欄に定める種類の資格者証の交付を受ける者とする。
      上欄 下欄
      第一種 アナログ第一種
      第二種 アナログ第二種
      第三種 アナログ第二種
      第四種 アナログ第二種
      回線交換種 デジタル第二種
      パケツト交換種 デジタル第一種
      国際電信種 デジタル第二種
      国際公衆データ伝送種 デジタル第一種

また、過去の公衆電気通信法を見ると、昭和28年当時から既に工事担任者という用語が法文に現れていることが分かります。

○昭和28年 法律第97号(公衆電気通信法)
  1. 第百五条
    1. 左の公衆電気通信設備の設置は、加入者又は専用者が行うことを妨げない。但し、同一の加入電話の電話回線又は同一の専用設備たる回線の一端に接続するものの全部についてする場合に限る。
      1.  構内交換設備及び内線電話機並びにこれらの附属設備
      2.  船舶に設置する加入電話の設備
      3.  専用設備の端末機器その他端末の設備
    2. 2~6 省略
    3.  加入者は、郵政省令で定めるところにより、公社の認定を受けた工事担任者でなければ、第一項第一号の規定による構内交換設備及び内線電話機並びにこれらの附属設備の設置に従事させてはならない。
○昭和33年 法律第137号 (公衆電気通信法の一部を改正する法律)
  1. (法定外契約約款の認可)

    第百八条の二
    1. 公社又は会社は、この法律で定めるものを除く外、公衆電気通信役務の提供条件であつて、逓信省令で定めるものを内容とする契約約款を定めようとするときは、逓信大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
○昭和46年 法律第66号 (公衆電気通信法の一部を改正する法律)
  1. (公衆通信回線使用契約に係る電子計算機等の設置)

    第五十五条の十七
    1. 公衆通信回線使用契約者は、郵政省令で定めるところにより、公社又は会社の認定を受けた工事担任者でなければ、当該公衆通信回線使用契約に係る電子計算機等の設置に従事させてはならない。

1種・2種がPBX関係の第105条、3種が地域団体電話の第108条の2、それ以外は全てデータ通信用で55条の17に該当します。なお、公社とは日本電信電話公社(NTT)のことで、会社とは国際電信電話株式会社(KDD)を指しています。

補足:上記の法文には逓信省・逓信大臣という文言がありますが間違いではありません。旧逓信省の復活運動の影響によるものと見られますが、実現に至らなかったため、後年になり法文にも修正が入ります。

「公衆電気通信設備工事担任者」概要

受験資格・種類

受験資格は一切無し、昭和47年より「公衆電気通信設備工事担任者」と名称変更され、4種類となった。(それ以前は昭和36年より「構内交換設備、地域団体加入電話設備等工事担任者」として、1種、2種、地団種の3種類となった時期が長く続いた。)

第一種
構内交換設備の全部および附属電話機等に係る認定
第二種
共電式構内交換機および磁石式構内交換設備ならびに付属電話機等に係る認定
第三種
地域団体加入電話設備に係る認定
第四種
電子計算機等に係る認定

【注釈】 磁石式(激しく古い)と共電式(古い)は手動交換用の電話機です。交換台に発呼を知らせるために発電機が付いているのが磁石タイプ、共電式は局給電タイプに改良されてオフフックだけで発呼を交換手に伝えるもの。いずれも自動式(ダイヤル式)ではありません。

公衆電気通信設備工事担任者の試験科目

1 筆記試験

第一種及び二種
  • 電話工学概論
  • トラヒック理論
  • 構内交換電話の設備及び技術(線路設備及び電力設備を含む。以下同じ。)
  • 交換局設備概要(線路設備を含む。以下同じ)
  • 構内交換電話および付属電話機等に関する法規
第三種
  • 電話工学概論
  • 組合交換設備(宅内設備、電力設備及びトラヒック理論概要を含む。以下同じ。)
  • 組合線路
  • 地域団体加入電話に関する法規
第四種
  • 電気通信技術に関する基礎知識
  • 電子計算機等のデータ通信回線接続のための技術
  • 電子計算機等のデータ通信回線接続に関する法規

2 実地試験

筆記試験合格者に対しては次の実地試験が行われる。なお四種は学科のみ。

第一種及び二種
  • 構内交換電話の設備及び技術
第三種
  • 組合交換設備
  • 組合線路

3 科目免除

科目の一部に合格した者は、科目合格者として、次回、又はその次の回の受験の際、当該試験科目を免除される。また実務経験によって試験科目の免除されることがある。

試験時期・受験地・受験料

官報公示
4月上旬
申請書受付
6月下旬
筆記試験
9月上旬
実地試験
10月上旬
受験地
東京、長野、名古屋、金沢、大阪、広島、松山、熊本、仙台、札幌、那覇
受験料
500円
問い合わせ先
電電公社電気通信局保全部管理課

上記資格の備考

上記の資格は、昭和55年に認定規則が改正されて、「パケット交換種」「回線交換種」が追加されました。それぞれ、NTTがサービスを始めた DDX-P, DDX-C 用途です。

「国際公衆電気通信設備工事担任者」の概要

昭和46年改正の公衆電気通信法により行われる認定試験。昭和47年度から年1回、国際電信電話株式会社により実施。昭和49年より日本データ通信協会が試験を代行。

受験資格・種類

受験資格は無し。資格の種類は1種類のみ

試験

科目

科目一
電気通信技術に関する基礎知識
科目二
電子計算機等の国際加入電信回線接続のための技術
科目三
電子計算機等の公衆電気通信回線接続に関する法規

科目一と三は公衆電気通信設備工事担任者(第四種)と共通、別途受験が必要。

免除

科目合格は2年間

公衆電気通信設備工事担任者1-3種有資格者、国際加入電信設備の設置及び保守に関する6ヶ月以上の実務経験者に対し、科目一が免除。

四種取得者は科目一、三が免除

試験方法

筆記のみ

試験時期・受験地・受験料

官報公示
5月
試験日
10月
発表
12月-1月
受験地
東京、大阪
受験料
500円
講習会
5000円で日本データ通信協会が実施
問い合わせ先
日本データ通信協会

受験データ

受験年度 受験者 合格者
昭和51年 285名 192名
昭和52年 159名 93名

上記資格の備考

上記の資格は、昭和57年に認定規則が改正されて、「国際電信種」になりました。同時に、KDDのVENUS-Pサービス用として「国際公衆データ伝送種」が誕生しています。

より詳しい情報は国際公衆電気通信工事担任者についての歴史メモをご覧ください。