電気通信主任技術者資格の概要

1.電気通信主任技術者とは?

電気通信主任技術者資格は、昭和60年に電気通信事業法の成立に伴って制度化された国家資格です。

電気通信事業を営む企業に必要とされる設備管理用の資格で、一定規模以上の電気通信事業者(NTT・KDDI・ソフトバンクなど)においては選任が義務づけられています。直接的な資格の需要は少ない[*1]ですが、有資格者を事業場や都道府県ごとに配置しなければならないため、「必置資格」[*2]に分類されています。

平成28年現在、2種類の資格が規定されており、いずれも通信ネットワークの監督業務を行うのが法的な職務です。

最も関連性が高い資格である「工事担任者」が、ネットワークの末端(電話端末)における工事スペシャリストであるのに対し、事業者側のネットワーク設備全体を統括するのが特徴です。

[*1] 平成27年度においては全事業者合計で、約1千名程度と推測される。(根拠:平成27年度電気通信主任技術者定期講習の受講者中、選任者数データ(978名)より。出典:日本データ通信 No.208, 2016, p.21 )なお、当該年度は講習制度の開始年度のため、資格取得直後(交付日から2年以内)に選任された者を除き、選任者全員に受講義務があった。

[*2] 平成23年10月14日 総務省発表(検査検定、資格認定等に係る利用者の負担軽減に関する調査<調査結果に基づく勧告>資料6 資格制度概況調査結果の分類) に基づく。なお、工事担任者は「業務独占」に分類

1.2 根拠となる法令

○電気通信事業法 第四十五条
  1. 電気通信事業者は、事業用電気通信設備の工事、維持及び運用に関し総務省令で定める事項を監督させるため、総務省令で定めるところにより、電気通信主任技術者資格者証の交付を受けている者のうちから、電気通信主任技術者を選任しなければならない。ただし、その事業用電気通信設備が小規模である場合その他の総務省令で定める場合は、この限りでない。

2.資格の概要一覧

以下の表1は、資格の簡単な早見表です。

表1 電気通信主任技術者資格の簡易早見表
資格分類 国家資格[総務省] / 必置資格[*2]
取得方法 1)国家試験合格 → ほとんどがこれ。
2)養成課程校の卒業 → 2016年現在1校のみ(府立南大阪高等職業技術専門校
3)総務大臣の認定 → ごく初期を除き、実質存在しないとみられる
有効期限 なし(終身)
取得後の講習等 非選任者は無し(選任中は選任後1年以内かつ3年に1度の講習義務あり。)
試験実施団体 (一財)日本データ通信協会
資格種別 2種類(伝送交換・線路)
受験資格 なし
受験料 18,700円-(700円×免除科目数)。全科目免除時のみ9,500円
試験の特徴 全4科目。科目合格制を採用(3年間有効)、共通問題の他、選択科目あり
試験形式 全科目マークシート、多肢選択式。
受験免除 国家資格、実務経験、学歴で一部免除あり
試験開催日 年2回(1月・7月)、日曜日
試験日数 1日で終了
難易度 電気通信分野の国家資格に限れば、第1級陸上無線技術士と並び、もっとも難しい資格の一つ。一般的な理系資格の中では、やや難しい程度と思われる。
受験地 主要15都市(札幌、仙台、さいたま、東京、横浜(又は藤沢)、新潟、長野、金沢、名古屋、大阪、広島、松山、福岡、熊本、那覇(又は西原町))
受験者数 年間 8,000~10,000人程度
合格率 20% 前後

3.資格の種類と監督範囲

3.1 資格の種類

 資格は設備の種類に応じ、以下の2種類に分かれています。

3.2 資格者の選任と設備種別

選任は、事業用電気通信設備を直接に管理する事業場ごとに、その場所へ常に勤務する者から行うことが基本となっています。また、平成23年度からは原則的に「都道府県」ごとにも選任[*3]されることになりました。

表2 資格の選任範囲
事業場の種別 資格者証の種別
事業用電気通信設備(線路設備及びこれに附属する設備を除く。) 伝送交換主任技術者
線路設備及びこれに附属する設備 線路主任技術者

線路設備とは、伝送路と呼ばれる有線通信に使用する電線類とそれに付随する設備を指します。具体的には電柱に敷設されている電話回線、国際電話に使用する海底ケーブル、市内を走る埋設通信線あるいは、それらを収容する洞道(とうどう;トンネル)、マンホール、ハンドホール、管路などを指します。
 すなわち、一般に線路としてイメージされる鉄道線路(軌道)とは全く異なります。

次に事業用電気通信設備ですが、線路設備以外のものという広い概念になっています。具体的には、伝送設備、無線設備、交換設備を中心にサーバや電力設備などが主な対象です。(ただし原則的に『回線』を保有している事業者の設備が対象。詳細はこちら

[*3] 平成22年2月26日 総務省令第11号による改正(電気通信主任技術者規則3条1項2号)。ただし、平成27年3月6日 総務省令第12号によって、公衆無線LANアクセスサービスについては選任義務を除外する規制緩和策が採られた。

3.3 監督範囲と職務

各資格者の監督範囲は、電気通信回線設備を設置する事業者における設備の工事、維持および運用と定められています。

○電気通信主任技術者規則 第6条に規定される監督範囲 (平成27年3月改正時点)
伝送交換主任技術者の監督範囲
法第四十一条第一項、第二項及び第四項の電気通信事業の用に供する伝送交換設備並びにこれらに附属する設備の工事、維持及び運用
線路主任技術者の監督範囲
法第四十一条第一項、第二項及び第四項の電気通信事業の用に供する線路設備並びにこれらに附属する設備の工事、維持及び運用

上記の「工事」や「維持」などの定義については議論の余地もありますが、以下のような解釈が総務省の研究会[*4]から報告されていますので。参考に掲示しておきます。

表3 工事・維持・運用の定義の例
業務 左記業務の意味 主任技術者の選任が必要な事業場の具体例
工事 事業用電気通信設備の新設、変更、修理等、事業用電気通信設備を新たに設置し、又は造作を加えること 設備の計画、工事(設計、新設、変更、修理等)の実施又は発注、工事管理・監督、竣工検査等の業務を担当する事業場
維持 事業用電気通信設備を技術基準に適合させ、その機能を本来の水準に保っておくために行う行為 設備の常時監視業務、定期的な巡視・点検・検査の計画、評価、品質管理等の業務を担当する事業場
運用 事業用電気通信設備をその本来の目的に沿って作動させ、操作し、電気通信事業の用に供すること 設備の運用業務、災害・事故発生時の指揮命令、復旧・修理の指示等の業務を担当する事業場

[*4]平成21年2月18日 総務省 「IPネットワーク管理・人材研究会」報告書の公表 本文第5章 p.43

平成27年には、これまで未定義であった具体的な職務も省令で規定されるようになりました。

○電気通信主任技術者規則 第3条 (第4項抜粋)
  1.  法第四十五条第一項の総務省令で定める事業用電気通信設備の工事、維持及び運用に関する事項は、次のとおりとする。
    1.  事業用電気通信設備の工事、維持及び運用に関する業務の計画の立案並びにその計画に基づく業務の適切な実施に関する事項(次に掲げる事項を含む。)
      1.  工事の実施体制(工事の実施者及び設備の運用者による確認を含む。)及び工事の手順に関する事項
      2.  運転又は操作の運用の監視に係る方針、体制及び方法に関する事項
      3.  定期的なソフトウェアのリスク分析及び更新に関する事項
      4.  適正な設備容量の確保に関する事項
    2.  事業用電気通信設備の事故発生時の従事者への指揮及び命令並びに事故の収束後の再発防止に向けた計画の策定に関する事項(次に掲げる事項を含む。)
      1.  速やかな故障検知及び故障箇所の特定のために必要な対応に関する事項
      2.  定型的な応急復旧措置に係る取組並びに製造業者等及び接続事業者との連携に関する事項
      3.  障害の極小化のための対策に関する事項
    3.  前二号に掲げるもののほか、事業用電気通信設備の工事、維持及び運用に関し必要と認められる事項(次に掲げる事項を含む。)
      1.  選任された事業場における事業用電気通信設備の工事、維持及び運用を行う者に対する教育及び訓練の計画の立案及び実施に関する事項
      2.  日常の監督業務を通じた管理規程の実施状況の把握及び見直しに関する事項

3.4 補足:事業用電気通信設備とは

「事業用」電気通信設備という用語は、単に通信事業のための電気通信設備という意味ではなく、法的な定義が存在しています。

○電気通信事業法 第2条、9条、41条、44条による用語の定義
電気通信設備の定義 【法2条】
電気通信を行うための機械、器具、線路その他の電気的設備をいう。
電気通信回線設備の定義 【法9条】
送信の場所と受信の場所との間を接続する伝送路設備及びこれと一体として設置される交換設備並びにこれらの附属設備をいう。
事業用電気通信設備の定義
第四十一条第一項、第二項又は第四項に規定する電気通信設備 【法44条】
  • 電気通信回線設備 【法41条第1項】
  • 基礎的電気通信役務の設備 【法41条第2項】
  • 有料かつ100万契約以上の事業者[*5]の設備 【法41条第3項/4項,H27告示278】

[*5]平成27年8月7日 総務省告示 第278号(PDF)にて、NTTぷらら、ニフティ、ビッグローブが指定された。

平たくいえば、一定規模の回線設備をもつ事業者の設備を「電気通信回線設備」と呼び、それを技術基準に適合させるために電気通信主任技術者が監督するというのが基本的な考え方です。

また、基礎的電気通信役務(固定電話(メタル・光IP)、公衆電話、緊急通報)については、主任技術者の監督が必要な事業用設備として個別に指定されていますし、平成27年からは非回線設置事業者でも契約数が多い事業者が対象に含まれました。

例えば、ISP設備は電気通信設備の一種ですが、電気通信回線設備に該当する例は多くありません。一般的に回線部分は別事業者から借用している例が多いと考えられるからです。(事業届出は必要だが、主任技術者の選任が不要なケース。)その他、Webサーバや掲示板、ECサイトも非電気通信事業として扱われるのが一般的で、届出も不要の部類が大半です。

多種多様なサービスが提供されている現代においては、どのようなサービスや設備が、法規制に該当するかを判断するのは意外に難しく、総務省の解釈資料(ガイドライン)として「電気通信事業参入マニュアル(追補版)」(PDF)が公開されています。