ゲルマラジオ研究の雑記・計画などなど

1.はじめに

 このページは、ゲルマラジオ研究途中のことを書いたり、つまずいた所、アイディアなどなど未整理事項を掲載するTBなしBLOGもどきのページです。

 なので、書いてあることはあまり信用なりませんのでご注意を・・

2011/02/20 研究進展(1)

ここのところ、プライベートが相当に忙しく、なかなか実態としては研究が進んでいませんが、少しづつ分かってきたこともありました。

■検波理論
 変調波についてはまだ不完全ですが、無変調については大方の目安がついてきました。おおまかに言うと、統一的な解釈が進んできたということなんですが、文章で書くとなかなか分かりづらいので、今後新コンテンツを作成しようかと思っています。

(1)検波回路の直流起電力は、ダイオードの種類を問わず、入力の振幅だけに比例して、その値は一定である。

2010/1/29の記事で、短絡形と開放形で起電力が一緒だった理由を考え、計算して行くと、そういう結論になりました。

 負荷抵抗の違いにより、出力電圧が上がったり下がったりするのは、あくまで検波の結果で生じた直流電流が、ダイオードで電圧降下を起こしているだけ。
 高周波から直流に変換するときの比率は、ダイオードの種類や特性の違いに一切関係がないという、ちょっと驚きの事実です。

 では、現実はどうかというと、だいぶ違いがあったりする訳で、おかしいのですが、これは、理想的なダイオードを仮定しているからです。

 影響するパラメータは、何でしょう?

1. ダイオードの寄生抵抗成分(並列)が結構、効いてくる
 ことがまず、分かりました。無負荷のときの出力電圧が、理論値に比べ、少し小さくなることは分かっていました、これは、ダイオードの寄生抵抗が数百kΩであっても影響が無視できないという現実です。実験では、1SS108の電圧低下が特に顕著だったのですが、これは最も寄生抵抗成分(並列)が大きいダイオードだったからでした。

 1SS108は、低インピーダンス検波には向いているものの、高インピーダンスでは、1N60にも大負けする特性だったということです。

 しかも、この並列抵抗成分は、入力インピーダンスをガツンと減らすような働きをすることが、理論的にも実験的にも分かりました。

 並列寄生抵抗の具体的な影響イメージとしては、検波出力に寄与しない「並列形検波器」がぶら下がっているのと同等です。

2. ダイオードの直列抵抗成分
 これも寄生抵抗の一種ですが、実はあまり影響はなさそうです。効いてくるのは、整流用途のような大電流が流れるような使い方のときであって、検波回路への影響は無視できることが分かりました。

3. ダイオードの寄生容量
 まぁ、超Hi-Zでなく、ショットキーであれば、あまり考えなくてもよいかなと思います。
影響の大半は、同調周波数がわずかにずれるということがメインで、感度への影響は、目くじら立てるほどではなさそうです。


上記を踏まえて、高周波ポテンシャルの直流ポテンシャルへの変換という観点で理論を構築し直せば、もう少し整った形式になりそうです。

他にも、いろいろあるのですが、続きはまた。

2010/05/06 トランスとヘッドホン、そしてインピーダンスマッチング

ゲルマラジオの受話器には何を使うか?

 大昔なら電磁型のヘッドホン、それ以降なら酒石酸のクリスタルイヤホン、私の子どもの頃には既にセラミック型のクリスタルイヤホン。

 それぞれ特徴がありますが、古典ラジオ風に作ることを考慮しなければ、携帯音楽プレイヤー用のヘッドホンが、入手性や感度、力率の面で最も良さそうな印象を受けています。

 今、下の写真のオーディオテクニカ社製ATH-SJ3というのが、感度もよく、もちろん音質も問題ないということで、以前から実験用として買ってありました。

 何よりも、どこのお店でも買える汎用性と安さが(三千円程度)魅力です。

 感度スペックでは108dB SPL/mW となっていて、1mWの入力で耳が痛いほどということ。会話レベルを50dBとすれば、概ね1uWでその音量が得られることになります。

 古典スタイルのヘッドホン(可動コイル型ではなく、鉄片を電磁石で振動させるタイプ)の中には、より高感度なものもあるようなのですが、スペックが不明すぎるのと、入手性が最悪という問題点(あと、値段も)があるので、今のところ選択はしていません。


オーディオテクニカ社製 ATH-SJ3 管理者のお気に入り

 しかし、ゲルマラジオにそんなヘッドホンは直接使えません。
インピーダンスが低すぎます。

 使うとすれば、片耳32Ωのインピーダンスを、何とかゲルマラジオに適したインピーダンスに変換してあげる必要があります。

 どれぐらい?

 感度・選択度を考慮すると最低数キロオーム、性能追及なら、100キロオーム以上を狙いたい。

 よく、ST-32(1.2kΩ:8Ω)でゲルマラジオのスピーカーを鳴らすという話がありますが、このインピーダンスはそもそも低すぎです。感度・選択度ともに最悪な方向。

 クリスタルイヤホンだって8kΩぐらいはあるのですから(1kHzで)

 電界強度が強くないとスピーカーが鳴らないというのは、上記のインピーダンスが低すぎるという点に起因する部分も多そうです。

 もちろん、半導体で増幅回路を組めば、上記のインピーダンス問題すべては簡単に解決してしまうのですが、パッシブな回路のみで音声帯域全体をインピーダンス変換しようとすると、トランスに頼ることしかできません。

 電子部品屋さんに置いてある定番は、サンスイ(橋本電気)の小型トランスですので、ここらあたりからチョイスするのが良さそうです。

 最大で500kΩから用意されていて、入手性も悪くなく、高いものでも千円程度なので、非常に有望。

 しかし、特性が今ひとつ不明な点が多いのと、そもそも、トランスのインピーダンスって一体何を示しているのかが全く理解不能だったので、今回もまた、クリスタルイヤホンでやったようなブリッジ回路を組み、詳細な測定をしてみました。


インダクタンス-抵抗用ブリッジ回路(マクスウェルブリッジ)

 すると、意外な結果が出ました。
今回測定したのはST-12(100k:1k)です。

 額面どおりの2次インピーダンス(1kΩ)で受けると、入力インピーダンスが80kΩしかなく、また、励磁インダクタンス成分が大きく(3H=j190kΩ@1kHz)見えたのです。

 詳細に実験をしてみると、原因は「鉄損」でした。

 トランスのコアの、ヒステリシス損とうず電流損の合計が、励磁コンダクタンスとして現れますが、この実測値が2.5u[S]程度、すなわち400kΩ程度の抵抗となっていたのでした。

 この400kΩと、2次側の1kΩが100kΩに変換されもの、この2つの並列抵抗値が80kΩになる原因。

 これでは、低域の音が出なくなるし、高域が強調されてシャリシャリする音質になってしまう。

 そこで最適値を探っているのですが、おおむね、50kΩ:500Ωあたりのインピーダンス変換で良好な特性が得られそうです。

 特性的に、インピーダンスが低いほど銅損(巻線の抵抗による損失)が増え、また逆に、インピーダンスが高いほどコアの損失(鉄損)が増加します。

 ついでに言うと、鉄損は理論上、周波数が高くなるほど増えるのですが、一定の電圧で駆動する条件を与えると、真逆になります。つまり低い周波数ほど損失が多くなる。
 これは実験やって初めて気付かされた事実。

よくよく考えてみると、理論的にも確かに合ってるんです。これ。

 そんな周波数特性も含めて、この最適値を探すのが今後の検討課題。

 実験的にですが、どうやら「トランスのインピーダンス」というものの考え方が理解できてきたような気がします。
 銅損、鉄損、励磁インダクタンスがキーワードです。

 なお、簡易的に100kΩにインピーダンス変換したヘッドホンは、おそろしく高感度で、手で触ったハムノイズがちゃんと聞こえるのに驚き!!

 ゲルマラジオの検波回路の設計緒元をヘッドホン側の総合インピーダンスに合わせば、超高感度ゲルマラジオ(アンテナ除く)が完成する予定です。

 もっとも、もう一工夫しますけど・・・。

 これまでの実験結果、変圧器の理論、ブリッジ回路の製作については、近日中に正式なコンテツにする見込みです

2010/03/30 バイアスをかけた検波器を考えてみた

 ここのところ、過去の論文をいろいと紐解いています。

 もちろん過去とは言っても、最近のものではなく、昭和10年代〜30年代頃の非常に古いものばかり。この頃までは包絡線検波器(ピーク・デテクター)の研究が盛んだったらしく、幾つかの主要な論文がありました。

 手法としては、大信号のキャリアを入力した検波器に信号成分(つまり、サイドバンド)を入れた際の挙動を、近似的に求めるというものです。

 今風な解析関数(変形ベッセル関数)は使っておらず、ダイオードを線形近似したものですが、これがなかなか難しく、頭がまだまだ追いつきません。

いずれ、論文が理解できましたら、ご紹介したいと思っています。

 さて、今日のお題は、「バイアス」をかけたダイオード検波器の挙動です。

 まだ理論計算が終わったところで実験的検証はこれからなのですが、小信号シリコンダイオード(Si D)にバイアスをかけて検波することにより、ゲルマダイオードやショットキー以上の性能が出るかもしれないというお話。

 バイアス付きの特徴は、下記のURLでもあるとおり、シリコンでは普段鳴らない、または鳴りにくい低電界地域でも、ゲルマダイオード並に高感度で受信できるということにあります。
 http://bbradio.hp.infoseek.co.jp/germa13/germa13.html
 http://homepage3.nifty.com/kasaradio/ksrd09/TNCT/etc/LEDRadio/index.html

 なぜ、そうなるのかを単純に考えると、微小入力電圧ではSiDの電流がほとんど流れないので感度が悪い。
 具体的には、Siだと0.6〜0.7V以上ないと電流が流れないため、これ以下の受信電圧では、ほとんど出力が取れないことにあります。

(より厳密な話は、こちら


 一方、鉱石やゲルマ又はショットキーであれば、0.2〜0.3Vで流れ始めるので、小さい受信電圧でも感度が確保できているわけです。


 そこで、Siにバイアスで下駄を履かせて、電流がある程度流れる領域に動作点を移してやると、感度がよくなるというはず・・・というのが基本的な考え方。

 初期の鉱石受信機は、鉱石の種類にもよりますが、バイアス電圧を与えるのが一般的で古典的な手法という一面もあるのです。

 しかし、動作点を「よく電流が流れるところ」に持っていくと、別の問題が現れます。
もっとも考慮すべきは、等価的な漏れ電流が大きくなること。

 シリコンだと、本来、負の入力はごく微量な逆電流しか流れませんが、動作点を1uAぐらいのところに持っていくと、負入力に対しても最低限1uA流れることになります。




 すると、電流が流れやすくなり感度が上昇した分、漏れ電流が大きくなり感度が低下する・・・ちょっと矛盾した状態になりますね。

 じゃぁ一体どうなるんだ???と、より理論的に計算をしたところ、意外にもはっきりと答えが出ました。結果は

 検波ダイオードにバイアス電流 IB を流したときのふるまいは、逆方向飽和電流isがIBに等しいダイオードを使用したものと近似できる。

 まぁこれには、いくつか理想的な条件が必要ですが、普通想像する範囲では十分使えそうです。

 シリコンダイオードの逆方向飽和電流isは、フェムトアンペアからピコアンペア。ゲルマダイオード並の動作を期待するときは0.数uA〜数uAぐらいのバイアスを流せばよいことになります。(1N60で0.5uA〜1uAぐらいのオーダ)

 上記、リンクの例だと、1.5V電源に1MΩ程度ですから、おおむねIB=(1.5-0.7)/1Mで、だいたい1uA程度のバイアスが流れていることになり、計算とも一致しますね。

 また、ゲルマダイオードでは、そもそも逆方向飽和電流isが大きいので、バイアスの効果は薄い場合が多いと考えられます。



 次に、isを等価的に上昇させたとき、どこまで感度が上昇するのかという問題について、答えの一端を。(まだ探ってる最中)

 実験的な経験ですと、バイアス電圧(電流)を増加するにつれ感度も上がりますが、ある以上になると感度が低下していきます。

考えられる事項としては、まず一つ
 バイアス電流IBを流したダイオードに小振幅の交流電圧を加えると、実は単なる抵抗として振舞います。その抵抗値はVT/IBで、IB=1uAなら、およそ26kΩの抵抗になる勘定。
(VT:熱電圧=26mVほぼ一定@室温)

 これ、トランジスタのエミッタ抵抗の原因です。エミッタ接地のベース側入力抵抗hieは、
hfe倍されたre=hib=VT/IE、以上余談。

要するに、電流を流しすぎると、ダイオードがただの抵抗になり、検波しなくなるわけですね。

二つ目に、ダイオードの直列抵抗成分の影響です。
理想ダイオードでは、電圧がちょっと増加しただけで急激に電流が流れます。

 これは現実のダイオード素子でも特性現れますが、小電流領域のはなし。
小信号シリコンだと、数m〜十数mA以上流れると、また、Geでも1mA程度以上流れると、
グラフが寝そべってきます。

 下の図は誇張したグラフですが、キュンと上昇するはずの電流が、直線になってきます。
これは、ダイオードに抵抗成分があることが原因で、傾きの角度そのものが抵抗値を表してます。

この領域では、ただの抵抗器になるので、検波はしてくれなくなります。


 以上で議論はいったん終わりになりますが、まだ検波部分も含めた理論の追求はできてません(検波時の逆バイアスも含めた一般理論)
 もう少し、理論と実験の追求ができてから、皆さんに詳しくご紹介できればなーと考えています。

まぁ、ゲルマラジオに電源は邪道!とおっしゃる方もいるので、なかなか難しい部分もあったりして。

2010/02/27 ゲルマダイオードに流れる電流の中身

 最近は、少しずつ時間を見つけては、古い論文を読んでいます。
その中では、ダイオードの電流成分が複雑なことを利用して各種の解析がなされていました。

その解析の一環として、ダイオードの電流がどのようになっているのかを調べた結果をここにメモっておきます。

 まず、下の図が包絡線検波器に0.5Vの高周波電圧を印加した場合のダイオード電流の波形です。

 計算は、条件は、コンデンサが十分大きな容量で、かつ、負荷抵抗は50kΩ、ダイオードの逆方向飽和電流は1uAとして計算したものです。利用式は以下の2式です。
ちなみに、このときのDC出力電圧は0.38179Vでした。

と、

を利用しています。

 図を見たままでも、ある程度の電圧がかかると、急に電流が大きく流れ始めるのがよく分ります。↓

理由は簡単で、検波器出力の直流電圧がダイオードに対して逆バイアスになり、
入力電圧が出力電圧を超えないとダイオードに電流が流れないからです。
上記のある程度の電圧とは、出力の直流電圧のことですね。


 古典検波理論だと、この急に流れ始める位相を中心に解析をしていまして、電力工学でいうところの流通角というものにあたります。上の図だと約±40度でダイオードONですから、導通角(流通角)は80度ぐらい。

 余談になりますが、この急峻な電流波形はダイオード整流を備えた機器では必ず発生するもので、電力線を逆流して配電・変電なども含めた電力系統に大きな影響を及ぼし、今でも、その流出防止が重要な課題になっています。(高調波電流問題)
閑話休題


 さて、この電流成分は、見るからに電圧波形と同じような正弦波ではありません。
正弦波で無いということは、いくつもの周波数成分が存在しているということを意味します。

 上記の例だと、1MHzの周波数を入力していますが、2MHz、3MHz・・・と倍数の成分が存在していることが、フーリエ級数より予想されます。


式で書くと上のようになります。
i0は直流電流、i1は1MHzの電流値、i2は2MHzの電流値・・・となる訳です。

 ゲルマラジオの検波器は、コンデンサによって、この高周波成分を全てショートさせていますので、理論的には0Ωの回路をぐるぐる流れる電流です。

 純理論の世界では、2MHz以上の高周波成分は電圧が発生せず、結果、いくら電流が流れようとも、消費電力はゼロになる勘定。

(注:0Ωだからといって、電流が無限に流れる訳ではありません・・・あしからず。
また、1MHzは入力側から電圧を印加していますので、ちゃんと電力が消費されます。
ついでに、直流i0は負荷抵抗に流れて電圧を発生させてますので、これも電力消費となりますよ。)


 では、この成分はどのような周波数成分が含まれているか、成分表を作成する必要があるのですが、普通に解析的に計算したところ、以下の式で表されることが分りました。

In(x)は第1種のn次変形ベッセル関数。
Em:入力振幅電圧
is:ダイオードの逆方向飽和電流
VT:ダイオードの熱電圧
Vo:検波器の出力直流電圧

そして、実際に上の条件で出した数値計算結果です。

各周波数別の電流成分
周波数 電流(uA)
DC 7.636
1MHz 16.82
2MHz 15.52
3MHz 13.59
4MHz 11.28
5MHz 8.894
6MHz 6.659
7MHz 4.739
8MHz 3.209
9MHz 2.069
10MHz 1.272

直流成分が7.6uAなのに、ほとんど倍ちかい量の高調波電流が流れています。

この結果から分ることは、ゲルマ検波器が理論どおりの動作をしていると仮定したとき、盛大に高周波電流が流れるという意味です。10倍の10MHzの成分でようやく直流比-16dBぐらいに減ってます。


次には実際にそれを解析的計算ではなく、波形を直接DFT(離散フーリエ変換、いわゆるFFTと同じもの)にかけてスペクトラムを見てみると・・・


(DFT条件 Δt=10us 1000点 Δf=100kHz ,矩形窓)

うーん、やっぱり、かなり流れています。
ダイオードは周波数変換器・・・ダブラとかミクサが存在する訳ですよ。

 現実にはそれほど高次のものは、ちょい少なめだとは思いますが、2次、3次あたりのスプリアス?成分はけっこうリアル。

無線送信機の終段にモニタ用でダイオード検波器を付けると、スプリアス特性が悪化すると聞いた覚えがありますが、もしそうなら、きっとこいつのせい

それと、直流を除いて、この電流を全てコンデンサ1個で逃がさなければならないのですね。少なくとも、コンデンサは高周波特性がそれなりによくならなくてはいけないかも・・・しれません。

ちなみに、この高調波電流成分ですが、小入力だと劇的に落っこちます。
これは、解に含まれる変形ベッセル関数の性質から説明可能

上と同一条件で100mVの入力振幅だとすると、出力電圧は43mV。スペクトルは?
というと、


(DFT条件 Δt=10us 1000点 Δf=100kHz ,矩形窓)

こんな感じで、高次の高調波は事実上無視できるようになってきます。


波形も見た感じ、まろやかテイスト・・・
尖った感じは少なくなりました。

 あれこれ、こんなことを求めているのには理由があるのですが、今日はこの辺でおしまいにします。



こーんなダイオード1個でも、流れる電流は複雑怪奇です・・・。

2010/02/06 ゲルマラジオの理論限界

最近になり、ゲルマラジオの感度測定をやり始めました。

そこで、悩んだのは感度の定義をどうするか?という点です。

アンテナ系を含めた受信系全体を考慮すると、たちまち大きな困難が立ちはだかります。なにしろ、アンテナの環境は無数で、かつ、ラジオ本体の部分も無数の状況がありますから、混乱に拍車がかかるに違いありません。

 そこで、まずは、アンテナ系と受信機本体を分離しなくては、本来の意味の感度が分らないという単純な事実に突き当たりました。

 先の文章で、50Ωのインピーダンスにしたいと考えた理由の大半は、ここにあります。
では、アンテナを除いたゲルマラジオ本体の評価・測定はどのようにすべきでしょうか?

 素朴な考え方では、入力高周波信号を電圧で測定し、出力信号も電圧で測ることから始まるでしょう。
 実際にそういった測定例は比較的多いようです。
 本質的にその考え方も誤りではありませんが、増幅ができないゲルマラジオである以上、

 受信機の入力高周波信号電力に対して、出力信号電力を測定する。

に尽きるのではないか?というのが私の結論でした。
これは、マイクロ波回線などではごく普通に計算されていることです。

 受信エネルギに対して、どの程度出力信号エネルギを取れるかの比をもって、何%の効率なのかを測るということです。

なぜ、わざわざ電力なのか?電圧での問題点は何かを考えましょう。

例えば、受信電力が1Wだったとしましょう。

 受信機は50Ωで受け取ります。
 このときの受信機の入力電圧は、7Vです。

 さて、それが共振回路に入りました、もし共振回路に上手くその電力が供給されたときの電圧はおそらく数百Vになります。

 しかし、この世にはエネルギー保存則があり、いくら電圧が上昇したところでエネルギー量は変わりません。どうあがいても1W以上のパワーにはならないのです。

 電圧が上昇した分、電流が減少し帳尻を合わせようとします。
これは、回路のインピーダンスが変わるという意味でもあります。

共振回路にもインピーダンスがあり、これは非常に高い値です。
ざっくりQ=50として、1MHzで普通の300uH程度のコイルを使っているときのインピーダンスは100kΩになります。

 50Ωで1W・・・7V
 100kΩで1W・・・316V

となります。電圧だけで評価をしようとすると、ゲルマラジオが増幅したかのような見え方も出来てしまうのですね。

 しかしながら、電力を測定するというのは、かなり難しいことだったりします。一方、電圧はもっとも測定しやすい量です。

 ですから、入力と出力のインピーダンスをあらかじめ測定・評価・設計を経た後で既知とし、電圧を用いて評価するのがベターということになります。



次にある問題は、AM:振幅変調 という無線方式自体の問題です。

 一言で云えば、「AMのキャリア電力ではなく、USB/LSB両方の側帯波電力を入力エネルギ基準にするべき」ということを言いたいのですが、分らない方も多いと思いますので具体例を交えて、記します。

 AMには変調度(0〜100%)という概念があり、変調度がもし0%なら、ただ電子レンジのように搬送電波を送りっぱなしにしているだけで、一切の信号情報は含まれません。
 このときの電力を搬送波電力といいます。これを100Wとしてみましょう。

 興味あるラジオの出力信号エネルギはというと、ゼロになります。具体的には、ゲルマラジオの検波電圧がひたすら直流だけで変化しない状態です。

 もちろん、情報が載らないだけでエネルギーだけはやってきます。家庭のACコンセントを想像してください。50Hz、100Vのただのエネルギ源ですよね。


 一方、変調が最大となったとき「100%変調」となるわけですが、このとき、AM信号には、搬送波と一緒に信号分のエネルギが乗っかり、「音声信号」の情報を持ったエネルギが可能な限り詰め込まれています。

 この音声エネルギはあくまで無線信号上のものですが50W分あり、全体の無線エネルギは100W+50Wで合計150Wのエネルギに増えるのです。

 このときのゲルマラジオ出力信号電力も最大になりますが、結局この50W分がゲルマラジオの信号出力エネルギの原動力になっているということになります。

 さて、ここで測定を考えたとき、このままでは変調度いかんで出力信号エネルギ量が変わってしまいますね。

 より具体的にいうと、アナウンサが大声を出すと変調度は100%に近づきます、そして、無音のときは「音声情報」が無いので0%です。

 平均の電波の強さはあくまで100Wですが、大声と無音の状態では、ゲルマラジオの信号出力エネルギが変化してしまうわけなので、何を測定しているのか分りません。

 これでは困るというので、変調度を一定に保った信号を使う必要があります。
 おおむね、放送の変調度の平均は30%程度ということらしく、JIS規格でも30%が標準。

 30%変調のときの具体的な電波の「音声信号」エネルギは、100W×0.3×0.3÷2で計算され、4.5Wになります。

 100Wの放送局が30%変調だとすると、たったの4.5W分しか「音声」エネルギが含まれていないのです!(これがAMが廃れた理由の一つ)

 だから、ゲルマラジオの出力はこの4.5Wが入力の基準となるべき

というのが、私の言いたかったことです。


さて、上記のことをまとめると
 Pc:ラジオ入力端のキャリアパワー
 Ps:ラジオ入力端のサイドバンドパワー
 m:変調度(0≦m≦1)
 Po:ラジオ出力端の復調信号パワー
 ゲルマラジオの受信効率ηp

ηp=Po/Ps

 これが感度の定義の一つです。
 
 Ps=Pc*m^2/2

 なので
測定しやすい項目から考えて、

 Zi=ラジオ入力端のインピーダンス
 Zo=ラジオ出力端のインピーダンス

 Vso=ラジオ出力信号電圧(実効値)
 Vi=ラジオ入力信号電圧(実効値)

ηp=2*(Vso^2/Zo)/{m^2(Vi^2/Zi)}
   =02*Vso^2*Zi/(m^2*Vi*2*Zo)

となります。
あとは、人間が十分に実用とできる音声信号電圧Vsoを規定すれば、良いわけですね。
まぁ、最終的には音波のエネルギまでたどり着くわけなのですが、そこまではしばらく無視しておきましょう。

すると、最終的に

  ゲルマラジオ単体の感度評価はηp(=0〜100%)という電力効率を求めるということに帰着する

ということになります。

一方、理論限界に言及した言い方であれば

 「無増幅である限り、いかなるAM受信機であってもηp=1(100%)が理論限界であり、その受信機の復調信号電力の限界値は、受信入力AM波に含まれる両側帯波のエネルギに等しい」

となります。


補遺:無駄に多いAMの搬送波電力は信号としては情報を持っていないので、これを増幅用の電源として用い、音声信号を増幅することは可能です。(低電圧なので困難な部分はありますが、実例あり)
 その際にはこの定義が使えず、ちょっと修正が必要ですね。まずは、「・・・その限界値は、無線信号の総電力に等しい」ぐらいに考えておきましょうか。

2010/01/29 おかしな計算結果

 ダイオード検波器の計算はこれまでいろいろとやってきたところですが、手持ちのSPICEシミュレータがヘボく、AM変調波だと今ひとつ上手なシミュレートが出来ないため、解析的な計算を中心にやってきました。

最近、気付いたおかしな計算結果のことについて書きます。

 この回路は、原理的にAM復調ができないものです。
「復調」はできませんが、信号が入れば直流だけは出力できますので、「検波」は可能です。

 ここで、復調とはdemodulationの訳語で、信号を取り出すという意味になります。
一方「検波」はdetectionの訳語で、信号を検出するとか探知するという意味合いです。

 AM復調ができない理由は、抵抗器が無いため。 入力振幅が変化したら、一番振幅の大きいピーク値でCを充電したきり、電圧が下がらず固定されたままになるからです。
 そんな性質があるため、ピーク検波器とも呼ばれます。

 実際に製作すると、上の回路図のような純粋な回路成分だけではなくなるため、漏れ電流などが発生し、時間が経つと共に電圧が低下していきますので、ある程度の復調はできたりすることも。

この回路の理論出力電圧は、


になります。
 Em:入力高周波電圧の振幅
 VT:ダイオードの熱電圧(室温でだいたい26mVぐらい)
 ln:自然対数
 I0:第1種0次変形ベッセル関数

Excelで計算するなら 
 A1セルに振幅電圧(V)を入れたとして、どこかのセルに以下の関数を入れれば計算ができます。

  =0.026*LN(BESSELI(A1/0.026,0))

不思議と、理論値には、ダイオードの種類に関するパラメータが入っていません。
 ダイオード種別がシリコンだろうが、ゲルマニウムだろうが、ショットキーバリアであろうが、理論上は同じ出力電圧です。
 その大きな理由は、直流電流が一切流れないからだと見ています。もちろん高周波成分の電流は盛大に流れますよ。


それで、最近計算した、短絡したダイオードはどのような特性を持つのか?です。



この回路の電流Iを計算で求めようというとことから気付いたのですが、回路電流のうち、直流成分IDCだけを取り出せば


 Em:入力高周波電圧の振幅
 VT:ダイオードの熱電圧(室温でだいたい26mVぐらい)
 is:ダイオードの逆方向飽和電流
 ln:自然対数
 I0:第1種0次変形ベッセル関数

 になりました。あっそういえば、この直流でダイオードにはVDがかからなきゃいけないなぁ
と、たまたまVDを計算したところ



 !! あれ、何で最初の回路と同じ電圧↓になるんだろうか???


もちろん、ダイオードの両端電圧なのか、コンデンサの両端電圧なのか違いはありますが、ここまで同じなのは、何か理由があるはずです。

今後は、このワケを考えていくことにしましょうか。

2010/01/20 包絡線検波回路のコンデンサ

包絡線検波回路は、ゲルマラジオの心臓部。

 なにせ、電波から音声信号を取り出す「復調器」は、いかなる受信機にもあり。これがなくては受信機が受信機たりえないコア中のコアな部分です。

どんな受信系を考慮しても、最後に残るのはアンテナと復調器の二つなんですから。

さて、この包絡線検波器に必要なデバイスは最低限3つ。

 1.非直線素子(ダイオードとか)
 2.コンデンサ(キャパシタという方がいいらしい)
 3.抵抗

であることは、ゲルマラジオを製作したことのある者にとって、常識的なことだと思います。

 もっとも、クリスタルイヤホン(セラミックイヤホンも含みで)を使うときは、自然とコンデンサを形成してしまうので、回路図上には存在しないこともありますけどもね。

 話は飛びますが、その辺の「解析的」な話は、数式ばかりで今ひとつ分かりずらいところ(マジすんません・・・)で、初心者向けのコンテンツを作らなくてはいけないかなぁーと思ってます

 それで、包絡線検波回路を構成するコンデンサについて話を戻します。
これが無くなってしまうと、どうなるのか?

 ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、「平均値検波回路」というものになってしまいます。
この平均値回路は、検波効率がよくありません。

なぜなら、包絡線検波器が、包絡線---すなわち「振幅のカタチ」をそのまま取り出すのに対して、平均値は高周波整流波形の成分のうち、直流付近の成分---すなわち「平均値」を取り出すからです。
 この平均値も、「振幅のカタチ」を保っているので、出てくる信号は理屈的には同じものです。

 なぜコンデンサ一つで大きな違いが出るのか、うんちくがそれなりにあるのですが、
かいつまんで書くと、高周波成分をショートさせるか否かの違いです。

 充電・放電というサイクルを繰り返すという、従来からの時間軸に着目した説明でも全然間違いはありません。

 しかし、周波数軸で考えると、もう一つの見方・・・RF信号に対して低インピーダンスを提供する部品がコンデンサ・・・が現れます。
 これは同じ現象を別の角度からみただけですけれども、検波器の理解を助けるものだと思います。

 コンデンサの値を大きくし過ぎると、歪が出る(ダイアゴナル・クリッピング歪)のも、この観点からいえば、ラジオ周波数を短絡するどころか、復調した音声成分まで短絡してしまうことにより、復調に異常をきたす−と、いうふうにも考えることができます。

以下、余談。

 なお、平均値検波では、検波出力には、なお、高周波成分が含まれているため
敏感な回路・・・例えば、高周波まで感度をもつ増幅器など・・・をつなぐためには、低域フィルタを通しておかなければなりません。

 この低域フィルタ(LPF)は、包絡線検波器のコンデンサに相当するものではないですが、高周波を除去するという一点においては、同じ働きをし、かつ、比較的簡単に適切な値を設定できるので、ダイアゴナルクリッピングを避けられるメリットがあります。

 さて、この包絡線のコンデンサ。違うモノでも類似した働きをもたせられないか?というのが今もっているアイディアです。

 このコンデンサ、値には意外にもシビアな設計が必要。
 値が大きければ大きいほど、検波効率がよくなります。つまり、高周波の短絡がいかに小気味よく成立するかが肝なわけですが、が、ある値以上になると音声成分まで短絡してしまい、歪が増大してしまいます。
 これを解決しつつ、0オームを目指したいと。

 この短絡というのは、実は、入力側の回路・・・たとえば共振回路・・・においても必要な事項なような感じを受けています。もちろん、入力側においては、受信周波数を除いてのことですけどもね。

今日は、こんなところで。

2010/1/17  50Ωマッチングとゲルマラジオ

 ゲルマラジオには、なぜか50Ωという概念が少ない。
高周波と付き合う人間なら、「50Ω」というものは、いつも付きまとってくる意味深い数字です。
 まぁ、他にも75Ωとか、200、300というものも比較的世の中にはありますね。

しかしながら、振り返ってみると、ゲルマラジオに整合を求めた形跡が希薄です。

理由をいくつか考えてみると

(1)アンテナのインピーダンスが不定な場合が多い。
 短波以上のアンテナであれば、インピーダンスを何がしかの方法で規定値に合わせこむのが一般的です。
 しかし、中波より下になるとアンテナ長が波長に対して短くなりますので、どうしても50Ωなどの低インピーダンスに合わせるのが難しいからでしょう。

(2)同軸ケーブルを使わない
 アンテナ線を直結して使うのが主流で、同軸ケーブルは要らないようです。
アンテナのインピーダンスが不定(というよりは、未規定)でかつ、受信機側も特段インピーダンスを合わせてはいないので、ケーブルの使用はむしろ動作を害し、例えば、同調範囲が大きくずれるなどの弊害が目立つでしょう。

(3)広い帯域
 500kHzから1600KHzまで3倍超の広大な周波数帯域を同調回路を一つか二つでまかなっているので規定のインピーダンスを保つのが難しい。



その他にもいろいろ理由はありますが、おおむね上であっているかな?。

 しかしながら、「ゲルマラジオはインピーダンスに無頓着である」というのは全くの誤りでもあります。
 しっかり設計されたものですと、コイルにタップが多数あったり、入力用巻き線が巻かれていたり、結合コンデンサを介してアンテナと接続されていたりと、さまざまな努力が見て取れます。

 要は、「ゲルマラジオは定入力インピーダンスでは無い」というだけなんですね。


 こんなことを考えたきっかけの一つは、マンションで室内電界強度が非常に弱く、ゲルマラジオどころか、普通のAMラジオでもかなり弱いため、室外(ベランダ)にアンテナを設置したいと考えたこと。

 それから、受信機の感度を測定するにあたり、インピーダンスが一定していないと
何かと不都合が多いことです。

 特にいくつかのラジオを製作したとして、どちらがより高性能なのかを判断するには、ぜひともインピーダンスを合わせたい。


定インピーダンス化メリットを挙げましょう。

(1)アンテナと受信機の分離ができる
 ゲルマラジオはアンテナ系と受信機系が密接に係わり合い、最高の状態に置くには複雑な調整が必要だが、アンテナと受信機それぞれに分けて設計・調整ができる。
 1dBも無駄にできないゲルマラジオにとって、それぞれを最適化できることは、大きいメリットです。。

(2)同軸ケーブルで引き回せる。
 屋外にアンテナを、屋内に受信機をという「普通の無線装置」のような構成ができる。


一方で、デメリットもあります。
定インピーダンスであることを、確認するのに補助的な測定器とか冶具が必要になりそう。

 近場に適度な放送局があれば、アッテネーターで強制的にマッチングを取るようなマイクロ波的な手法も使えると思いますが、そうでなければ発振マーカーとか要りそうです。

 また、検波回路用にいったん、インピーダンスを上げてやら無くてはならず、
変換ロスの発生は不可避です。

 また、選局のたびに細やかな調整が要るでしょう。屋外アンテナの調整もその都度とりなおさなければいけません。まぁこれは、高級なゲルマラジオに欠かせないので、あまりデメリットとはいえないかも・・・

 こういったデメリットはあるものの、ゲルマラジオを受信機化するには欠かせないステップではないかと、最近は思い始めました。

 なお、インピーダンスを50Ωにすることで、アマチュア無線用に設計されたアンテナのノウハウを生かせるというのも一つの強みだと考えています。


 今年は、さらなる深みを体験するべく、50Ω入力のゲルマラジオを設計・製作していこうと思います。

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