電気通信主任技術者資格の改正動向(2019)

最終更新日: 2019-10-30

1. はじめに

2019年9月現在、電気通信主任技術者(と工事担任者)の試験制度に関する改正が進められています。しかしながら、改正内容の詳細についてはまだ明らかになっていません。

今回は過去の改正と異なり、昭和60年から続いてきた「専門科目」そのものについて変更がなされる方針ですので、今後の動向と影響について「予測」してみようというのが本ページの趣旨です。

結論は9月~10月以後に出そうなので、それまでは首を長くして待ちましょう。

2019-10-18 追記 改正案の具体的な資料が公表されました。専門科目自体が無くなって設備科目に科目概要が残るだけの方針です。科目再編予想は想定外となる形で完全に外れました。

このまま省令改正したと仮定すると、単に専門が無くなった程度の印象。

→詳細 IPネットワーク設備委員会 第53回 にある資料53-68(PDF)に概要が出ています。

工事担任者についても2種は全面廃止。名称がアナログ通信とデジタル通信、総合通信になるとのこと。旧工事担任者の名称と似てますが、1種2種ではなく1級2級になる方向性です。

2019-10-22 7.【参考】工事担任者の動向に追記
電気通信主任技術者改正案(2019年10月時点)

総務省 科目構成案(2019年10月時点)

工事担任者改正案(2019年10月時点)

総務省 工担改正案(2019年10月時点)

2019-10-22 追記

現時点ではこれ以上の詳細案が出ていないので、予測も含みますが、ざっと重要箇所を見ていきましょう。

まず気付くのは「設備管理」に「データ通信」が含まれず、代わって「サーバ設備」が入っています。もう全部がデータ通信と言っても過言ではないですし、交換機なども仮想化とかサーバ化が著しいので、まぁ納得。

続いて、「ソフトウェア管理」が設備管理に追加されました。このあたり、2018年12月に発生したエリクソン社製モバイル用交換機の埋め込み証明書期限切れという世界的な事件が影響していそうです。国内でも大規模通信障害が発生、検討会でも重要な事象として認識されており総務省も緊急点検を実施しました。これらの関係者意見が反映されたと見え「ソフトウェアの導入・維持管理に関するものやトラブル対応などに関するもの」と書かれています。

この結果は第二次報告書にも記載されていて、ある意味想定内だったのですが、新設専門科目に入るものと想像していたところ、蓋を開けてみれば設備管理に入っていたというのが現時点の結果です。

では、いつから実施されるのか?という点です。「必要な省令及び告示等の改正(年度内)とされているぐらしか分かりません。

試験日程も省令改正の詳細が分からない限り、予測は付きませんし、設備や専門の科目合格の取り扱いも不明。そもそも旧電通主任の「みなし」があるのか否かも含めて分からない点が多すぎます。

これまで、電通主任は試験内容が変わる度に全てみなしが適用されてきたのですが、今回もそうなるのかは分かりません。主任技術者でみなしが無い場合は影響が大きいので、移行試験とか講習による認定とか(近年のデ協がやってる専任者講習の延長)なども考えられなくはないです。

早くて2021年1月期になるはずと個人的には思うものの、2004年度には事業法改正影響で試験実施月すら変わったこともあるので、省令改正案とデ協の情報を待つしかなさそうです。

2019-10-24 追記

専門科目が無くなる影響で心配なのは、無線従事者との免除関係に変化が出ることです。旧2種伝送交換は平成11年度第2回試験から初めて「無線」を選択できるようなったのですが、それまで無線従事者との免除関係は全くありませんでした。(経緯は 6.4節 に書いてあります。)

これに倣うならば、無線従事者との関係が失われる可能性があります。ただし、現時点では何も省令案詳細が出ていないので憶測にしか過ぎません。

当時の省令改正前は、1技を取得していると、1種伝交のシステム・専門が免除。線路のシステムが免除と現時点と変わり有りません。2種伝交だけシステムも専門も免除関係が無かったのです。

専門が無くなると陸技、総合無線通信士、海上無線通信士の「無線工学A」免除の維持が怪しいと思う次第。「無線工学の基礎」は免除が続く可能性がそこそこあるかも。逆に無線従事者→電通主任の場合は免除対象の専門が無くなるだけなのであまり影響なしと。

このような影響がある場合には、「電気通信主任技術者規則」と「無線従事者規則」の同時改正がなされるので、要注目。

目次 リンク(そのうち情報が出そうな場所)

2. 改正のきっかけ

きっかけは、現在の電気通信事業用設備がIP化し、SDNやNFV、あるいはIoTなどの新技術・新領域が普及してきたことです。従来よりもソフトウェア的な要素が強くなっており、障害対応も複雑化しています。

ところが、それらの対応を試験科目にぶち込むにしても「伝送」「交換」「無線」「データ通信」「通信電力」といった、考古学的な分類ではさすがに厳しい。

それで、検討会がいいたいことは「時代に合ってないよね」という至極真っ当な結論です。

IPネットワーク設備委員会 第42回(2018-10-09)で、デ協は受験者がいない「水底線路」「通信土木」を中心に科目の見直しを訴えます。[1]

それを含む検討の結果、第二次答申[2]で、

電気通信主任技術者については、様々な専門分野を担当する複数の有資格者が集団で業務を分担する体制への移行及び専門的能力や設備管理に係る試験科目の拡充や整理・統合の必要性を踏まえ、現行の試験科目及び講習科目の構成を見直す

と結論付けられました。

3. 改正の方向性

第48回の報告書や、第49回の対応状況に関する資料(PDF)によれば、専門科目構成の見直しをすると明記されています。

情報通信審議会からの二次答申(令和元年5月21日)を受け、資格制度に関し、以下の事項について検討。
(1)電気通信主任技術者

  • ① 試験科目(主に専門的能力に係る選択科目)等の構成の見直し
  • ② 現行スキル標準(平成22年10月策定)の見直し

また、答申の注記として、

例えば、ハードウェア系、ソフトウェア系、セキュリティ系等の分類を軸にした選択科目の設定が考えられる。(報告書 p.33)

とあります。ただ、これ自体は参考程度で強い縛りではないだろうと思われます。

具体的な検討結果が出るのは「今秋」とされています。

4. 改正内容の推測

4.1 資格の種類は変わるか?

伝送交換と線路の2種類については、今後も継続すると考えます。

資格の詳細な種類については総務省の裁量が認められていますが、法律の規定では

 電気通信主任技術者資格者証の種類は、伝送交換技術及び線路技術について総務省令で定める。(法46条)

とあることですし、省令レベルでは変えられそうにはありません。(国会審議が必要)

報告書でも、

通信ネットワークのコア/中継系(伝送交換)とアクセス系(線路)の考え方やこれらの区分による設備管理については、当面想定されるIP化・仮想化の進展においても維持されるものと考えられる。

とされているので、なおさら心配は無用です。

4.2 変更ターゲットは専門科目だけか?

おそらく、専門8科目の統廃合と新設のみと考えます。

「主に」と言う表現がされているものの、専門科目以外の「電気通信システム」、「法規」、「設備管理」の3科目は、あったとしても受験者にとっては軽微な変更でしょう。

強いて挙げるならば、伝交・線路ともに「設備管理」へ業務マネジメントの設問が追加される可能性があります。

伝送交換と線路の両方に共通して、現在の専門科目にはない「ソフトウェア技術」やソフトウェアで制御される論理的なネットワークに関する設備管理の知識、これらに関する実効的な管理体制や障害対応を含む「業務マネジメント」の知識・能力が求められる傾向にある。 (報告書 p.32)

これについては、電気通信主任のスキル標準(総務省)のおしごと領域。

4.3 科目の再編予測(伝送交換)

2019-10-22 追記

専門科目自体が無くなる方向なので、本予測は意味を失いました。削除予定です。

まず。第42回議事録(PDF)を見ると、現行の試験制度(科目構成)に皆ため息を吐いてるよう様子が想像できる面白い状態に。(そりゃそうだ。)

おそらく情報処理試験により近い科目が新設されるのではと想像しています。旧科目はハード系/ソフト系に分割されるか、IP/レガシー等の分類で再編された上で、科目数がスリムになりそうというのが個人的な予想。

「伝送」「交換」「データ通信」の3科目は既に境界があいまいで、出題も6割が共通になっている現状があります。報告書にも記載されているぐらいです。

他方で、例えば、伝送交換の専門科目となっている「伝送」「交換」「データ通信」の棲み分けや関係性が曖昧になっている (報告書 p.33)

少なくともこの3科目は再編の中心となって新設1~2科目に統合される可能性が高そうです。

叩き台として「通信ソフトウェア技術系」「通信ハードウェア技術系」を中心に、セキュリティを加えた3分野を考えているようなので、それぞれの科目内容が分割されて再整理されるのではないかと想像します。

注目すべきは「通信電力」。元より独自色の強い科目ですが、通信設備技術の一種として特別扱いされています。

また、ハードウェアを中心とする物理的なネットワークも引き続き並存するため、その設備管理の知識・能力も同時に求められており、さらには、伝送交換の専門科目となっている「通信電力」に関連して、通信局舎・電源・空調・ファシリティ等を含めた通信インフラの保守・管理や災害時の応急復旧のための「通信設備技術」の知識・能力も重要とされている。
(報告書 p.32)

これらの情報から、通信電力は形が変わったとしても実質は継続するものと想定しています。

困りどころは「無線」。これも独自色の強い科目です。昭和60年当時は固定通信・衛星通信(=中継系)が対象だったものの、近年は携帯電話(アクセス系)に中心がシフトしていることが指摘されています。

無線科目は見直し対象として図示されているものの、どう扱うかまでの方向性が見えません。

この科目があるからこそ、第一級陸上無線技術士との相互免除関係が強く維持されていることもあり(過去の旧2種伝送交換の例がある)、単独で継続する可能性もあると見ています。

伝交科目の個人的な再編予測
科目 再編後
伝送 ソフトウェア系(主にIP)とハードウェア系(レガシーを含む。)の2科目に分割。
旧伝送・旧交換の部分は主にハードウェア系として再編成し、選択問題化。
交換
データ通信
無線 あまり変わらない or ハードウェア系に統合
通信電力 あまり変わらない or ハードウェア系に統合
情報セキュリティ 可能性は低いが、新設されるかも

参考までに、2008年のデ協試案[3]によれば、「コアネットワーク」と「無線」「通信電力」の3科目に絞るというものがありました。

4.4 科目の再編予測(線路)

2019-10-22 追記

専門科目自体が無くなる方向なので、本予測は意味を失いました。削除予定です。

線路の3つの専門科目のうち、「通信線路」はあまり影響されなさそうです。他の2科目については予測が立たないの正直なところ。

専門科目の見直しイメージ(報告書 p.34 図3-1)では、以下のようにコメントされています。

「伝送」「交換」「データ通信」「無線」「通信土木」「水底線路」の整理・統合が必要

デ協の要望を素直に受け取ると、あまりにも受験者が少ない「水底線路」「通信土木」の2科目を何とかして欲しい(≒やめたい)というもの。通信線路については触れられていません。

線路の専門科目になっている「通信土木」や「水底線路」の受験者数が特に少数傾向で推移している、といった課題も顕在化している。(報告書 p.33)

検討の方向性として、この2科目を「完全削除するか」「1つに統合するか」「通信線路に溶け込ませるか」などの案が考えられますが、現状の出題状況からして単一統合は困難に見えます。

「通信土木」は電通主任試験の中でも異色な科目内容で他科目との関係が希薄すぎます。「水底線路」は40%が「通信線路」と共通問題である事は救いがありますが、やはりマニアックな分野。

よって、方向性として「水底線路」を一部「通信線路」に取り込んで、「通信線路内で選択問題化」する可能性が高く、超独立色の強い「通信土木」との2科目体制を狙うのではないかと睨んでいます。意外にも思い切ってバッサリ2科目削除する可能性もあるやもしれぬ…。

参考までに、2008年のデ協試案[3]では、「アクセス」と「通信土木」の2科目に絞るというものがありました。

5. 新科目への移行に関する想定

5.1 移行に伴う救済措置

かつて試験に直接影響のあった改正は2004年。電気通信事業法の大改正を受けてのことでした。

このとき、「第二種伝送交換」という資格が消滅するという資格制度始まって以来の地殻変動があったのですが、幸いなことに資格自体は「伝送交換」として引き継がれ完全消滅は免れました。

とはいえ、旧2種は強い制限が残り、使い道が限られることに。今となっては他資格の免除が効くことが救いです。

また、「第一種伝送交換」はみなしが適用されて、新伝送交換と同等とされたので問題は生じませんでした。

新制度移行に際しては、科目合格者に対して2年間だけ試験が継続されました。この試験は特例試験と呼ばれ、39名が合格しています。

科目合格の有効期間が2年間という時期のことですので、現在では3年間になる可能性もありそうです。

このあたりの経過措置については、報告書でも注釈されて受験者の不利益が出ないように勧告がなされてます。

資格制度の改正にあたっては、資格試験の受験者や指定試験機関等の対応を考慮して、一定の期間を設けて施行することが適当。(報告書 p.33 注27)

ただ一点、気になる事例として過去の工事担任者の改正(2005年)が挙げられるでしょう [4]

その点、電通主任は恵まれていて旧2種が消滅した以外の不利益は無かったのです。

5.2 合格済み専門科目廃止時の影響

新制度が施行され、旧専門科目が消滅したとしても問題は無いでしょう。

十中八九、新制度でも継続して科目合格が継続すると思われます。法的なテクニックで遣り繰りするハズ。現在も科目にかかわらず「専門的能力」という枠内で科目合格が維持されていますので、影響は軽微と想定しています。

2019年時点の法律上、資格者証自体には専門科目という情報が不要だからです。(資格者証番号としては読み取れますが。)

6. 歴史から学ぶ過去の事例

6.1 第二種伝送交換の廃止(2004年)

2004年、インターネット時代に合わせるべく電気通信事業法が大改正された影響で、「第一種」「第二種」と2種類あった伝送交換資格が一本化されました。

これは1985年に定義された事業者の枠組みが変更された影響であって、ネットーク安全性とかスキル云々とは関係がありません。

それまでは、旧来からの回線設備を持つのが第1種事業者、それを持たずに「データ通信」で付加価値サービスを行うのが第2種事業者とされていたのです。(法律制定時にはもちろんインターネットを想定していない。)

'90年代半ばまでの2種設備は VAN (Value Added Network)と呼ばれていました。現在のインターネット上で行われているサービスを、クローズドネットワークで実現していたと考えればよいでしょう。この頃から急増したISP事業者は大半が2種事業者です。

これら2種事業者の規制は緩かったのですが、大規模事業者と国際事業者は「特別第2種事業者」と区別されて電通主任の選任が要りました。

5.1節で述べたとおり、資格が消滅した後も「特例試験」が実施され、科目合格者と線路主任取得者は2年間だけ受験を継続できました。(平成16年度第1回~平成17年度第2回)

これらの影響かどうか定かではありませんが、仕切りなおしの平成18年度第1回は難問だらけで史上最低の伝交合格率(7.4%)を叩き出し、受験者を恐怖に陥れます。しかもここから3回は受験者数のワースト3をレコードするなど、まさに氷河期と言いたくなるような惨状でした。

6.2 伝送交換に情報セキュリティが追加(2001年)

インターネットが普及したことにより、サイバー攻撃に対する備えが必要との提言から、伝送交換設備管理に情報セキュリティが追加されることになりました。

プロセスとしては、郵政省で2000年2月–11月に開催された「電気通信事業におけるサイバーテロ対策検討会」の中間報告によるアクションとして、主任技術者規則が改正(平成13年1月30日総務省令第8号)。

規則の施行は2001年7月1日で、7月22日に実施された平成13年度第1回試験から出題が始まりました。設備管理の問5が情報セキュリティに割当てられるようになったのは、この時点からです。

かなりスピーディな展開。

6.3 線路主任にも情報セキュリティが追加(2009年)

これはいまだに納得がいかないのですが、総務省 IPネットワーク管理・人材研究会にて、以下のような提言がなされた結果、情報セキュリティが線路にも追加されることになりました。

パソコンの普及やインターネットの利用の増加に伴うサイバー攻撃等に対するセキュリティ対策の重要性に鑑み、伝送交換種の試験において出題されているセキュリティの基礎知識を問う問題を、線路種においても出題する必要があると考えられる。

(2009年2月18日 報告書 p.32)

主任技術者規則は平成21年6月30日 総務省令第74号で改正され、即日施行(2009-06-30)でしたが、翌月の試験には間に合わなかったと見えて、1回スキップしてから出題されました。

なお、このとき科目合格が2年→3年に延びるというお慈悲が与えられたのは、受験者を増やそうとする努力の賜物でしょう。インセンティブの増加という表現が出てきます。

6.4 旧2種伝送交換で無線が受験可能に(1998年)

これも旧2種に係る案件です。旧2種は専門科目の選択に制限があり、5科目中で唯一「無線」だけは受験できませんでした。

それと連携して無線従事者の有資格者は2伝交の免除が一切無いという状況。逆に2種を取得していても無線従事者試験の免除はなかったので、要は互いに全く関連ない状態だったのです。(線路ですら陸技と1総通があればシステム免除が受けられた。)

平成10年の電気通信事業法改正(法律第58号)によって、2種事業者も伝送路を設置できるようになったため、平成11年度第2回(2000年1月23日実施)からは無線が受験可能になりました。(1998年10月29日 郵政省令第93号での規則改正、1999年8月1日施行)

これによる不利益は無いので、特段の措置はありません。強いて言えば、旧2種法規に電波法関連が追加されたぐらいでしょうか。

7 (参考) 工事担任者の改正動向

総務省案ではAI2種,DD2種を単純に削除し、資格名称を変更するという予測通りの結果になりました。

ただし、気にしていた2種の取得者をどう扱うかは今のところ不明です。「廃止に伴う経過措置を設定」としか書いてありません。そして元から試験内容の議論は薄いので、たぶんほとんど変わらなさそうという印象。(スキル標準は多少いじる余地を残しているが。)

名称はデジタル通信1級~2級アナログ通信1級~2級。あとは総合通信という変更案です。

まさかの先祖帰り感が半端ないですね。2005年にAI、DDと分かりにくい名称にしたのは何故でしょう。旧アナログ1種も残存してるさなか、アナログ通信1級だと区別が付きにくいし、略称は完全にカブるし、何か微妙な感じ。

ISDNも、もはやデジタルではなくアナログのカテゴリなんだぁ~というのが第一印象でした。(ISDNはパケット交換とみなされてデジタル1種しか工事できなかった時代がある。)

今回は草案と銘打っているものの、1級、2級というクラス分け方式。無線従事者みたいにしたいようです。「種」というのはカテゴリ分けな意味合いが強いのですが、これは元々昭和28年に電電公社の構内交換設備工事担任者認定規則が出来たときから続く伝統的なもので、第1種~第4種が規定されたのが嚆矢。今から見れば1級~4級の方がわかり易い区分ではありました。

当時、あえて「種別」としたのは工担の技術認定対象となるPBXが自動式、共電式、磁石式と時代順で3種類に分かれていた影響が大きいと思います。自動交換機が組めるエンジニアは磁石式など当然分かっているという前提もあり、設備の「種別」と技能クラスとしての「級」が混在するような形になりました。

また、さらに遡ると、旧工事担当者が1級~3級、旧直接工事従事者が1種~3種とクラス分けされており、工事担任者は旧制度の直接工事従事者相当との資格と考えられたかもしれません。

参考:最初の工事担任者資格の種別(昭和28年時点)
第1種
PBX全て
第2種
自動式PBX: 100回線以下(保守は500回線以下)
共電式PBX: ○
磁石式PBX: ○
第3種 (※昭和36年に廃止)
自動式PBX: ×
共電式PBX: ○
磁石式PBX: ○
第4種 (※昭和36年に廃止)
自動式PBX: ×
共電式PBX: 50回線以下
磁石式PBX: ○

その後は、工担の範囲に新しい設備「種別」またはサービス「種別」が加わっていくだけなので、これはこれで成功だったのでしょう。消えたものも含めて書けば、秘話装置の「特種」、地域団体加入電話用(組合交換設備)の「地域団体種」(後に「第3種」)、データ通信用の「第4種」、デジタルデータ交換サービス(DDX)用の「回線交換種」及び「パケット交換種」などがありました。

問題は昭和60年以後、事業法が施行されて国家資格「工事担任者」となったときでしょう。この「種」の考え方をそのまま引き継いでしまったのです。(そもそもこの時点で「電気通信設備工事担任者」にしておけば良かったのに・・・とか。)

このときアナログは確実に第1級~3級でよかったのです。デジタルは回線交換(2種)とパケット交換(1種)に設備種別で分かれてしまったものの、包括関係にあることから、これも1級~2級にすべきだったと思います。

旧資格の回線交換種とパケット交換種は完全に異なる2種類だったので、引き摺られてしまったのかなと想像してます。あるいは、新種別が出ることを見越していたのかも(想像しすぎ?)

でもまぁ、新種別候補は結局インターネット関連に集約されて、しかもアクセス種別が多様化して V.34 とか V.90 みたいなモデムを使ったアナログ加入者線から、ISDN, ADSL, 光(GE-PON)など、ことごとく違う有線通信規格がごちゃ混ぜになったこともあって、資格制度が追いつく間もなかった感が強いです。(出題内容を変えて対応してきた。)

電通主任だけではなく、工事担任者についても見直しが検討されています。

資料を見る限り、最大の目的はDD2種・AI2種の整理のようです。取得比率はAI、DD合わせてもたった3%しか居ないですしね。もっとも、簡単に廃止で済ませる訳にはいかないので、目下検討中。

2種は昔から中途半端な印象で、3種は家庭用、1種はオールマイティで分かりやすい。かといって、2種は1種とさほど難易度が変わらないとくれば当然の結末でしょう。(なので、参考書籍も少なめ)。新制度開始から10年と経たず、家庭用アクセス回線があまりにも高速化したのでインターネット回線なら3種でも1GbpsまでOKとか、後追いで省令改正する事態に。

ドラスティックに制度移行した2005年時点ではもう、旧2種取得者が激減してました。だったらこの時さっさと2段階制にしておけば良かったのにとは思います。しかしながら、旧2種は17万人も取得者がいて踏み込めなかったかもしれません。

「工事担任者」という資格名称を分かりやすいものにという要望は以前から根強いのですが、こればかりは事業法に明記され国会での審議改正が必要なので、かなり望み薄でしょう。

今回は、「工事担任者」という部分は無理だが、省令レベルで改正可能な「AI種」、「DD種」という資格名称部分に着目されています。AIはアナログ・ISDN、DDはデジタルデータというのは本当に分かりにくいです。ぶっちゃけ、レガシー回線とIP回線て分類すると分かりやすいんですが、法的に不正確だというのはしょうがない。

脚注

  1. 2018年10月9日 総務省 情報通信審議会 情報通信技術分科会 IPネットワーク設備委員会(第42回)における配布資料 資料42-2-1 (一財)日本データ通信協会資料(PDF) "4-1 電気通信主任技術者試験の専門科目別受験者数" p.8

  2. 2019年4月 総務省 情報通信審議会 情報通信技術分科会 IPネットワーク設備委員会(第48回) 資料48-1 第二次報告(案)(PDF) p.33

  3. 2008年6月26日 総務省 IPネットワーク管理・人材研究会(第4回) 資料4-5(PDF)  このときは、新資格の創設や資格名称も含めて広く検討されていた時期のものであり、現在の検討方向とは異なっているため注意が必要。

  4. 2005年の工事担任者改正では、アナログ種・デジタル種が廃止され、AI種・DD種が創設された。ところが旧資格は有効とされたものの新制度へのみなし移行が無かったため、工事種別によっては新資格を取得し直さなければならない制度となった。ただし、旧アナログ・デジタル総合種のみ現行AI・DD総合種と同一の工事監督範囲であるため、旧総合種は実質的な影響を免れた。(もしくは旧アナログ1種と旧デジタル1種を両方とも取得している必要がある。)

    なお、このときの改正に至る経緯はほとんど表に出ていないので、どういった契機と検討がなされていたのかは全く不明であった。(2004-09-06 付け 総務省パブコメで突如として発表され、1年後の試験から適用。)

    部分的に分かっている事は、2004年2月、総務省内にデ協との連絡会「電気通信主任技術者試験及び工事担任者資格検討連絡会」が設置されたこと。その目的が受験者減少の要因となっている現場の実態と資格制度の乖離を解消して、『市場ニーズに即した魅力ある資格制度、試験の実現に向けた検討を行う。』とされていたらしい程度です。